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 終身雇用が崩壊し、日本の雇用環境が大きく変わろうとしている中で、個人はどのように生きていったらいいのか。2020年3月16日号特集「どうする? 働かないおじさん」(3月16日発売)では、「働かないおじさん」に陥るマインドセットから脱却し、ミドルが復権するためのレシピを伝授する。電子版では、特集の一部を先行して公開する。

 今回は、日本ラグビーフットボール協会で理事を務める中竹竜二氏のインタビューを掲載する。自律支援型の指導法で、監督として早稲田大学ラグビー蹴球部を大学選手権2連覇に導いた中竹氏。マネジメントとコーチングが専門で、「コーチのコーチ」である日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターを務め、日本ラグビー強化の底上げを担った。現在は企業のリーダー育成トレーニングを担うチームボックスの代表として引っ張りだこ。中竹氏は「ミドル・シニア世代に今、必要なもの」として、「にわかファン」のように恥ずかしがらず自分を棚卸しすることを勧める。

(聞き手は日経ビジネス記者 島津翔)

実は、中竹さんのことを早稲田大学ラグビー部のキャプテンの時から存じ上げています。せんえつですが、比較的小柄で足も速くない。それでも名門のキャプテンを務め、メンバーをまとめる姿に憧れを抱いていました。スタジアムで観戦しながら、強烈なリーダーシップを感じました。

中竹竜二氏(以下、中竹氏):それはありがとうございます。でも、特別な力があるわけではなく、私は「誰でもリーダーになれる」と考えていますし、当社はそれを前提としてプログラムを組んでいます。

 うっすらと小学生時代からそう思っていました。「僕がなれるんだから、誰でもなれるだろう」「これは能力ではないんだろうな」と。誰よりも努力しようと思っていたし、実際に努力してきましたが、中学、高校、大学といろんなスペシャルなプレーヤーに出会って、価値観がどんどん揺れ動くなかで、私のリーダーに対する考え方も変わっていったんです。リーダーに必要なのは、組織を大きく動かす能力より、自分をどうリードできるか。セルフリードできるか。自分で自分の背中を押せる人がリーダーなんです。

中竹竜二氏
日本ラグビーフットボール協会 理事
チームボックス 代表取締役
1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、英レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権2連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会 「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行うチームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』( CCCメディアハウス)など多数。(写真:岡崎隆夫)

もう少し詳しく教えてください。

中竹氏:日本企業は、分業制を敷き効率を優先してきました。セールスはセールス、生産は生産。例えばよく言われる話ですが、商社に入って初めにエビを担当すると、ずっとエビ貿易に携わってキャリアを過ごすなんてことが実際に起こっていたわけです。つまりスペシャリストを大事にしてきた。

 ただ、これだけ世界情勢や競争環境が変わる中で、1つのことに詳しくてもうまくいかないということが分かってきました。「T型人材」と言われるように、専門性を深めるにしても、「T」の字のようにまずは横に広げないといけない。つまり、「越境」しなければなりません。

 様々な分野で、1人の天才よりもコレクティブジーニアス(集合天才)という概念が重要だということが分かってきました。つまり、様々な領域の組み合わせが価値を生む。セールス、企画、開発、生産と経験してもう一度セールスをやってみる。知らない領域でも周りとコミュニケーションを取って、自分のものにしていく。そうした経験が重要だとはっきりした。