終身雇用が崩壊し、日本の雇用環境が大きく変わろうとしている中で、個人はどのように生きていったらいいのか。2020年3月16日号特集「どうする? 働かないおじさん」(3月16日発売)では、「働かないおじさん」に陥るマインドセットから脱却し、ミドルが復権するためのレシピを伝授する。電子版では、特集の一部を先行して公開する。
大手企業が次々に日本型雇用からの脱却を模索する中、働く個人には何が必要なのか。悲観的になるより、己を知るきっかけだと捉えたい。多くの専門家は、今後のキャリアを考える第一歩として、スキルの棚卸しを勧める。

急にスキルの棚卸しと言われても何から始めればいいか分からない──。そんな読者のために、本誌はパーソルキャリアと協力して、ワークシートを作成し、「日経ビジネス」3月16日号に掲載した。そのワークシートの1つが「モチベーション曲線」だ。自分のこれまでの経験を振り返ることで、自分のスキル(Can)ややりたいこと(Will)を見つけるもの。具体的な書き方は以下の通り。
- 時系列で自身の記憶に強く残ったイベントに「晴れマーク」「雨マーク」「星マーク」を当てはめ、「当時の出来事」に記載する
- 「晴れ」はうれしかったことや感動した出来事、「雨」は失敗や挫折した経験、「星」は転換点や大きな変化があった出来事を指す
- 3つのマークを「モチベーションが高い-低い」の軸でプロットし、曲線でつなぐ
- 学生〜社会人で学んだスキルを「身に付けたスキル」に記載する
- 晴れや雨の傾向を分析し、「自身がどのようなときに充実していたのか? 悔しかったのか」を見つける
- 星の傾向を分析し、「そのイベントを経て自分はどう感じたか。その経験をどう生かしたいか」を見つめ直す
- 雨を見て「自身がどのようなときに悔しかったのか?」などをグルーピングして見つける
- 見えてきたCanやWillを踏まえ、それらを実現できる活躍先が現職であるかどうかを内省する
モチベーション曲線のサンプルを以下に示す。これくらいの密度になるまで書き込み、自分を見つめ直してほしい。
曲線を書いた後でどんな風に自分を棚卸しするのか。上のサンプルを例に考えてみよう。まずは「星印」の傾向をつかむ。例えば大学時代と社会人数年目の星を見ると、「OB訪問で『労働は苦役なりの価値観を壊す』というテーマが見つかった」「父親のセカンドキャリアを自社サービスにつなげる」といったことを「星印=転換点」として捉えている。
パーソルキャリアでハイクラス人材のキャリア戦略プラットフォーム「iX(アイエックス)」を担当する望月輝氏は「この2つの星印の共通点は『世の中に新しいインフラをつくる』という点ではないか。こういった共通点に向き合うと『Will』が見つかっていく」と話す。
晴れマークや雨マークの傾向をつかむことも自身の棚卸しになる。あなたがうれしかったのは「業績などの数字を達成したとき」なのか、それとも「他者が喜んでくれたとき」なのか。逆に、あなたが嫌いなのはどんなときなのか。
望月氏は「実際に、業績を出しているときは雨マークで、結果は出なかったが、がむしゃらに新しいことにチャレンジしていたときに晴れマークという人もいる。その時の部署や役職などもヒントにしながら自分と向かい合ってほしい」とアドバイスする。
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