「我が国初!浙江大学の〝黒科技“で、70代の四肢まひ患者が『念力』で飲み物を飲む」──。今年1月、中国の現地メディアからこんなニュースが伝えられた。
2年前に交通事故で首を痛め、完全四肢まひの状態にある72歳の男性が、浙江大学が開発した最新技術によって、今では「念力」でコーラを飲み、中国式揚げパンを食べられるようになり、いずれはマージャンもできるようになる。これがニュースの骨子だ。
タイトルで使われた「黒科技」とは、日本の人気SF『フルメタル・パニック!』(中国語タイトル『全金属狂潮』)に登場するブラックテクノロジー(現在の科学技術の水準を超えた根拠のない自然原理に反した技術)の中国語訳だ。中国のネット社会では、未成熟ながらSF的な超最先端技術、いわば本特集が言う「ヤバい技術」の意で使われている。

ここまで来たか? チャイノベーション
意思の力だけで遠くに離れた物質を動かす念力(サイコキネシス)は、SFやおとぎ話の世界ではおなじみの超能力。実現したとすれば確かに黒科技としか言いようがない。
「すべての生命体は熱エネルギー(思念)を放射している。戦いに明け暮れているうちに敵が放つ殺気を感じ取れるようになる。それが思念の第一歩で、訓練すれば自由に放射をコントロールできるようになる。そしてさらに開発すれば、それによって物質を動かし変形することも可能になる」
これがフィクションの世界でよく出てくる念力の概念。1974年、ユリ・ゲラーが来日しスプーン曲げをしてから40年余り、もはや“チャイノベーション”で世界の技術革新をけん引するまでになった中国は、ついに念力の存在まで証明したのだろうか。
結論から言えば、そこまではいかない。
報道によると、今回の「念力」は浙江大が独自に開発したシステムを活用したもの。簡単に言うと、頭部に装着した電極から被験者の意思(脳の信号)を読み取ったシステムがロボットアームを動かしている。
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