廃炉工程表は5回目の書き直し

 廃炉は文字通り原発の廃止措置。老朽化し、事故後に厳しくなった安全基準やテロ対策のための大型投資をしても回収できない原発などの廃炉が増え、国内60基のうち24基が廃止を決めている。事故炉である福島第1原発は他とは取り組みが異なり、11年から約30~40年かかるとしている工程は3つに分かれる。

 第1期は4号機の建屋内から使用済み核燃料の取り出しを始めた13年11月ごろまで。4号機は水素爆発は発生したが、事故時は定期検査中で炉内に燃料棒がなく、炉心溶融は起きなかったため、最初に取り出しができた。

 第2期は事故から10年目あたりまでで、炉内で燃料棒が溶け出した溶融燃料(デブリ)の取り出しに着手できるまでの期間としている。今はこの時期に当たる。それ以後は、デブリの搬出をはじめとする難作業が待ち構える。これが第3期で41~51年に終了することになるという。

 だが、これまで計画は変更を重ねてきた。昨年末、工程表は5度目の改訂となり、「(前回分から)1~5年繰り下げになった」(八木秀樹・東電ホールディングス原子力・立地本部長代理)。デブリについては2号機から21年に取り出し始めることを初めて明記したものの、1、2号機の建屋内にある使用済み核燃料を含めて取り出しをそれぞれ遅らせた。

 背景にあるのは、廃炉を福島の復興と両立させるために徹底して慎重に進めようとする政府の思惑と見られる。敷地の他の部分と違い、高い放射線量が記録される1~3号機での取り出し作業で万一、放射線が飛散することがあれば、ようやく広がり始めた周辺住民の帰還に影響を及ぼしかねない。正念場にさしかかって、時間的な余裕をもう一度取ったというところだ。21年に始めるとしたデブリの取り出し技術もまだ確立されておらず、技術開発を続けながら進める他ないのが実情でもある。

 先を見通せば、課題はさらに山積している。

1350トンの液体を収容するタンクが約1000基

 原子炉建屋の西、なだらかに高くなっている丘に1基1350トンの液体を収容する大型タンクが約1000基、隙間もなくびっしりと立て連ねてある。ここに毎日、放射性物質の汚染水がたまり続けているのである。

汚染水をためるタンクは既に1000を超え、2022年夏には収容能力の限界を迎える
汚染水をためるタンクは既に1000を超え、2022年夏には収容能力の限界を迎える

 事故で破壊された建屋には地下水や雨水が入り込み、放射性物質が溶け込む。これをくみ出し、途中、放射性物質の除去装置を経てその大部分を取り除き、パイプでタンクにため込んでいるのだ。これが日量170トン(18年平均)。既に計118万トンに達し、「22年夏にはタンク全体が一杯になる」(東電HD)という。

 タンク内に入っているのは、除去装置を使っても取り切れない放射性物質の1つ、トリチウムなどの残った汚染水。汚染水処理を始めた初期にはトリチウム以外の放射性物質の処理が完全にできず、一部が残っているとされる。それを含めて再処理するにはさらに時間がかかる。タンク容量の限界は刻々と迫るが、今のところ対策はないのである。

 仮にトリチウムだけを残して浄化しても、その処理にも難題がある。トリチウムを含む汚染水は基準以下に薄めれば海洋放出することが国際的にも認められている。今年1月末にはこの問題を議論する経済産業省のALPS小委員会が「復興との両立」を求めながら、海洋放出を有力視する提言をまとめた。だが、地元双葉町、大熊町など4町で作る福島県原子力発電所所在町協議会は即座に「環境や風評への影響を慎重に議論すべきだ」との要望書を東電に出している。

 汚染水だけではない。廃炉の際には放射性廃棄物も出てくる。福島第1では今のところ状況を把握した上で、その対応を決めることになっている。しかし、他の廃炉原発(予定含む)と同様、処分場の確保は極めて難しい。

 廃棄物は汚染度の高い順にL1~3の3段階に分かれている。建屋の周辺設備のコンクリート、金属など放射能レベルの極めて低いL3、原子炉に関わる廃液、フィルターなど比較的低いL2、そして原子炉内の制御棒や炉内構造物などのL1である。

 このうち、例えばL1は地下70メートルより深い場所に10万年埋めておく必要があるとされるが、規制基準もまだ明確になっていない。その他も長期にわたって地下などの保管が必要になるが、処分場のメドは全く立っていない。だが、その処分責任は電力会社が負うこととされている。

 一方で技術開発の難しさや長期化から廃炉コストは上昇を続けている。東電は福島第1原発の後、昨年夏には福島第2原発の廃炉も決めたが、そのコストは当初2800億円と見積もっていたものを決定時には4100億円に引き上げている。廃棄物処理にかかる重いコスト負担は東電に限らず、廃炉原発を抱える電力会社に共通するものでもある。東電はその中で最も厳しい環境にあるといえるだろう。重荷を抱えても進む他ないのだが。

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