燃焼エンジンと同時並行でEV開発

いつ戦略を変えたのでしょうか。

シュマル氏:今年1月に戦略を変更しました。グループレベルでの、グループテクノロジーの開始についても同様です。これが出発点となりました。

 そして1月以降、担当者や分担の方法、進め方について日々話し合いを重ねてきました。ただ、VWは大きなグループを抱えているので、簡単ではありません。ここでは何千人ものエンジニアが働いており、燃焼エンジンに関する現在の開発に加えて、EVなど新しい事業にも目を配らなければなりません。

 多くの従業員が新旧両方の技術に携わっているため、新しい分野のみに集中するわけにはいきません。変化は一歩一歩進めなくてはならず、今はとても複雑な工程を踏んでいるところです。繰り返しますが、大きな変更点は各ブランドですべてを同じ方法で進めることをやめたということです。全工場にわたって作業を分担し、1つのモデルを作り上げるようにしました。

フォルクスワーゲンとベルギーの素材大手ユミコアは、電池のバリューチェーン構築で協力している
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コバルトを含まない電池セルを開発する

電池の原材料については、リチウムやニッケルやコバルトなど、採掘に関する環境面や社会面での問題があります。どのように解決しますか。

シュマル氏:課題は2つあります。社会的な影響と希少性です。そのため、そうした貴重な材料をより少なく使う戦略に集中しています。将来的にコバルトを含まないセルを開発し、社会的な問題を回避しようとしています。さらなる技術と開発で、より高速な充電が可能になる、マンガンとニッケル比率が高いセルを造ります。

 適しているのはどんな技術か、どんな化学反応かということを追求しています。その過程で、そうした素材が不足していることがわかりました。そこで、バリューチェーンの垂直統合を図ることを決めたのです。採掘からセル製造まで目を向け、一次サプライヤーだけではなく、バリューチェーン全体で適した素材と量を獲得したいと思っています。

 なぜなら、25年以降は素材の量が課題となってくるからです。原因はこうした原材料が不足していることではなく、採掘のプロセスが確立されていないことにあります。4~5年のリードタイムが必要です。25年に高い需要が出てくるとしたら、その5年前には採掘を始めなければなりません。VWは採掘のキャパシティーについて見定めるのが遅かったので、将来のセル生産の目標達成には遅れが生じるかもしれません。

ニッケルはどのように確保しますか。

シュマル氏:私たちはクローズドループ(完結する循環)・アプローチを取ろうとしています。これまでの経験から明らかなことは、最終製品であるクルマだけを追求していたらサステナブル(持続可能)な企業にはなれないということです。本当に大切なことは、全体のバリューチェーンを見ることです。バリューチェーンにおいてサステナブルなやり方を取っていなければ、消費者は製品を買わないかもしれません。

 どこで採れたニッケルを使うのか、どんな採掘プロセスを用いるのか、社会的に容認されるものか、どんな種類のエネルギーを使うのか……採掘場でクルマを使うならどんな燃料で動くものなのか。ディーゼルなのか、電動なのか、電池セルはどのエネルギーを使うのか? 私たちは、電池のバリューチェーンの細部について考えています。

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