世界の電気自動車(EV)用電池を巡る競争が過熱している。ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、2030年までに欧州で年間240ギガワット時を確保する。トヨタ自動車は14日、30年までに世界で年間280ギガワット時の電池を確保すると発表した。いずれも20年の世界の車載電池生産量を上回る規模を、1社単独で確保しようとしている。

 今後の自動車各社の競争は、電池の性能と調達力が左右するのは間違いない。強烈なEVシフトを進めるVWグループは、どのように大量の電池材料を確保するのか。VWグループで電池事業を統括するトーマス・シュマル技術担当取締役に電池戦略の詳細を聞いた。

<span class="fontBold">トーマス・シュマル氏</span><br />1964年、ドイツのフランクフルト生まれ。91年フォルクスワーゲン(VW)入社。2007年、同社ブラジル法人の最高経営責任者(CEO)。19年からVWグループ部品事業CEO。21年1月にVWグループの技術担当取締役に就任(写真:Mari Kusakari)
トーマス・シュマル氏
1964年、ドイツのフランクフルト生まれ。91年フォルクスワーゲン(VW)入社。2007年、同社ブラジル法人の最高経営責任者(CEO)。19年からVWグループ部品事業CEO。21年1月にVWグループの技術担当取締役に就任(写真:Mari Kusakari)

欧州で電池工場をどのように建設していきますか。

トーマス・シュマル技術担当取締役(シュマル氏):既に欧州に6つの電池工場を建てることを発表しています。1つ目はスウェーデン、2つ目は独ザルツギッターに建て、3つ目はスペインに建設する予定です。新しい製品と新しい技術ですから、これは大変難しいチャレンジです。2025年に電池事業を始めるとすれば、22年には敷地を確保し、24年にはセル生産を始める必要があります。クルマの電動化における最大の難関は、セルが入手できるかどうかです。

 出資先である中国の車載電池大手、国軒高科に技術サポートを要請したところ、合意してもらいました。自社だけで進めていくのは困難ですので、国軒高科と共に知識を重ね合わせていこうとしています。

 VWは、電池の製品開発の面では経験が少ないものの、生産拡大の面では豊富な経験があります。例えば、まったく新しい製品だとしても、生産規模を拡大できる力が私たちにはあります。国軒高科との提携は、製品の開発を助けてくれるものです。現在は工場の生産拡大において国軒高科と協力している段階です。

ブランドごとに同じ開発をせず、役割を分担

EV開発のためにVWグループの役割をどのように変えていますか。独アウディが最先端のEV開発を担当していますね。

シュマル氏:今はMEBとPPEという2種類のEVプラットフォームがありますが、25年からはVWグループ内に1つだけのプラットフォームにします。その中で適切な複雑性とバリエーションを持たせようとしています。全グループを調整する責任は私にあります。

 そして各ブランド内でも様々な開発分野があります。これは以前とは異なる状況です。過去にはすべてのブランドで燃焼エンジンを使っていましたが、現在では「あなたはこっちの分野を担当、あなたはあっちの分野を担当」というように分担していますから。3回同じことをして3種類の結果が出るようなことはやりません。

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