EUが懸念する「欧州のシンガポール」出現

 

 2016年のブレグジットの是非を問う国民投票の際に、ジョンソン首相は「Take back control」という言葉を打ち出し、盛んに用いられた。英国はEUのルールに縛られてきたが、ブレグジットにより「主権を取り戻す」という意味だ。

 「公正な競争環境の確保」という分野で、英国がEUのルールに従うことはブレグジットの根幹を覆すことになる。とはいえ、EUとの貿易関係は極めて重要であるため、従来と同じ条件でEUの単一市場にアクセスできなければ、経済的なダメージが大きい。英国はEUのルールには従わないが、単一市場に従来と同じような条件でアクセスしたいという要求をEUに迫り続けている。

 この要求は、EUにとって受け入れ難い。加盟国が共通のルールを守るというのが、EUの基本理念であるからだ。

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この記事はシリーズ「大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。