
「我々は交渉の期限切れを繰り返しているが、交渉を続ける責任がある」。欧州連合(EU)のフォンデアライエン委員長は13日、疲労の色を隠せない様子でこう語った。
英国とEUは、両者の将来関係を巡る交渉の最終期限を12月13日に設定していたが、交渉の延長を発表した。同日、英国のジョンソン首相とフォンデアライエン委員長が電話で協議。12月31日である英EU離脱(ブレグジット)の移行期間の終了まで残された時間が少ない中、交渉を続けることで合意した。
しかし、ジョンソン首相は13日午後、英メディアに対して「現在、英国とEUは非常に深刻で困難な問題を抱えており、WTOルールになる準備をする必要がある」と述べた。EUとの自由貿易協定(FTA)を結べず、2021年1月1日から関税が発生する可能性が高いことを示唆している。
交渉が難航するのは、両者が3つの分野で対立しているからだ。それは、英国がEUのルールに合わせる「公正な競争環境の確保」と、紛争解決の「ガバナンス」「英海域でのEU漁船の漁業権」だ。この中でも特に、「公正な競争環境の確保」については、根本的な部分で全く折り合っていない。
通常の国際交渉では、事務方が事前交渉で合意内容を固め、首脳会談でそれを確認し合意するというケースが多い。今回は首脳会談で膠着状態を打開しようとしているため、ジョンソン首相とフォンデアライエン委員長は5日から電話を含めた直接会談を4回しているが、交渉はほとんど進展していない。
16年6月のブレグジットを決めた国民投票から現在まで、英国とEUの交渉は最も重要な部分について堂々巡りが続いてきたと言える。これまでの交渉の経緯は以下の記事に簡潔にまとめたので、こちらをご覧いただきたい(参照:ジョンソン英首相の奇策は結実するか EU離脱交渉が最終章へ)。
ジョンソン英首相は「キープ・ディスタンス」と注意される
象徴的な場面があった。9日に、ジョンソン首相はEU本部のあるベルギーのブリュッセルを訪れ、フォンデアライエン委員長と対面で会談した。冒頭の写真にあるように、記者団の前で写真撮影に応じた際、ジョンソン首相は2人の距離を縮めようと近づいたが、ファンデアライエン委員長から「キープ・ディスタンス」とピシャリと言われ、距離をとった。
自らのペースで自由に行動をしようとするジョンソン首相をファンデアライエン委員長がたしなめる。英国とEUの通商交渉においても、そのような構図で対立が続いている。
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