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 11月23日朝、英国が沸き立った。英製薬大手のアストラゼネカが英オックスフォード大学と開発する新型コロナウイルスのワクチンについて、臨床試験(治験)の最終段階で平均70%の効果が確認されたことを発表したからだ。中間分析ではあるが、ロックダウン(都市封鎖)下で窮屈な生活を強いられる英国の人々にとって、久々の明るいニュースだった。ジョンソン英首相は、「信じられないほど心躍るニュースだ」と語った。

 この治験には英国とブラジルから2万3000人以上が参加。中間分析では新型コロナを発症したのは131人で、そのうちワクチンを2回接種した人が30人、偽薬の接種を受けた人が101人だった。ワクチン接種で今のところ重症になった人がいなかったことも朗報となった。

 アストラゼネカは「直ちに世界各国での早期使用の承認申請に向けた手続きに入る」と発表した。英政府は明言していないものの、病院の関係者に取材したところ、承認が順調に進んだ場合、早ければ12月中旬から接種が始まる可能性があるという。

英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大学は新型コロナウイルスのワクチンを共同で開発。臨床試験における最終段階の分析に、世界の耳目が集まっていた(写真:ロイター/アフロ)

 米国では米ファイザーが独ビオンテックと共同開発する新型コロナワクチンについて良好な最終治験の結果を発表し、米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請した。米メディアによると、FDAは12月10日に同ワクチンを承認するかどうかを議論する有識者会合を開き、早ければ11日から接種が始まる見通しだ。英国でも承認が順調に進めば、世界最速に近いスケジュールで接種が始まる可能性がある。

 英病院の関係者によると、医師や看護師も今回の発表を歓迎しているという。深刻な副作用は報告されていない上、周囲に医師や看護師の治験参加者がおり、その人たちに重篤な副作用が出ていないことも安心材料になっているという。

ファイザー製ワクチンに比べ価格と運搬に優位性

 ファイザーのワクチンの有効性は95%で、米製薬の新興企業モデルナのワクチンは有効性が94.5%と発表されている。それに対して、アストラゼネカのワクチンは70%と有効性で見劣りがするが、世界保健機関(WHO)はコロナワクチンに50%の有効性を求めており、その基準をクリアしている。また、アストラゼネカのワクチンは、投与量と投与方法によって有効性に差があり、1つの方法では有効性は90%だった。

 多くの専門家が評価するのが、ワクチンの価格と運搬性の高さだ。英BBCによると、1回の薬価は3ポンド(約420円)ほどと見込まれており、ファイザー製の約15ポンド(約2100円)やモデルナ製の約25ポンド(約3500円)より安い。

 またアストラゼネカのワクチンは通常の冷蔵庫で保管できるなど、運搬しやすいのが大きな利点だ。ファイザーのワクチンは、セ氏マイナス60〜80度の低温で保存する必要があり、保管や物流に課題がある。