ロックダウン後にあり余ったエネルギーを発散させる

他の欧州諸国ではロックダウンが明けた後に、感染が再拡大し、再びロックダウンを導入することになりました。

ピエール氏:ロックダウンなど厳しい規制を導入しても、どこかで終わらないといけません。娘が英国にいるから分かるのですが、ロックダウンが終わると人々はあり余ったエネルギーを発散し、友達に会ったり、レストランやバーに行ったりするでしょう。それで「バーン」と感染が爆発的に広がり、また次の波が起きてしまいます。

 テグネル氏が、夏にラジオ番組のインタビューで興味深いことを言っていました。「欧州の国々が次々とロックダウンをしていくのを見て、困惑している」と。欧州の疫学者たちの多くは強いネットワークを持っており、問題の脅威を見積もるために定期的にカンファレンスを行っているので、互いをよく知っています。

 テグネル氏によると、欧州諸国の疫学者の間で事前にロックダウンをすべきではないということで合意があったというのです。それなのに次々にロックダウンする欧州各国を見て、テグネル氏は困惑したと言っていました。欧州各国がロックダウンを導入したことで、スウェーデンが元の合意に沿った唯一の国となってしまい、テグネル氏は驚いたわけです。

 例えば、英国は大きく方針転換しましたが、最初の戦略はロックダウンをしないというものでした。ただ死者数が増え、ある学者たちが「ロックダウンをしない限り死者数は増え続ける」と指摘したことで、ジョンソン英首相は恐れて「ロックダウンを今すぐしなければならない」となりました。とても切り替えの早い方針転換でした。

欧州各国で導入しているロックダウンは科学的な判断というより、政治的な判断が強いということですね。スウェーデンではどのような政治的な議論が交わされているのでしょうか。

ピエール氏:スウェーデンでは春から夏にかけて、野党は目立った行動はせず、政権に対峙しようとはしませんでした。その代わり、10月ぐらいからコロナウイルス対策はより政界で議論されるようになり、現在は野党から批判が出てきています。

 スウェーデン政府はコロナ対策委員会と呼ばれるものを立ち上げました。この委員会は、コロナ対策を詳細に分析し、うまくいかなかったことを明らかにし、その問題点を改善する方法を模索する機関です。1年か2年でまた新しい感染拡大が起こるでしょう。そのときにうまく対処できるように、備えておかなければなりません。

いくつか重要な点を挙げていただきましたが、政治的な問題についてもっとお聞きしたいです。日本では政府はそこまで信頼を寄せられていません。スウェーデンではなぜ政府がそこまで信頼されるのでしょうか。

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