
スウェーデンの高級車メーカー、ボルボ・カーは11月9日に同国首都のストックホルムで新型EV「EX90」を発表した。同社はこのEX90を「新時代のEV」と位置づけ、開発に力を入れてきた。そのため、様々な要素技術を小出しに発表。9日にようやく実車をお披露目し、全体像が明らかになった。
お披露目は新型EVだけではない。2022年3月にCEO(最高経営責任者)に就任したジム・ローワン氏も多くのメディアの前に初めて登場した。カジュアルなズボンにスニーカーという姿で、EX90の周りを歩きながら世界中のメディアに語りかける。「ソフトウエアによって真に定義される最初のボルボ車だ」。
このローウェンCEOの存在そのものが今の自動車産業のトレンドを象徴している。個人用携帯情報端末で一世風靡したカナダのブラックベリーなどで20年以上、製品開発などに携わってきた。自動車好きの「カー・ガイ」というよりデジタル産業に詳しいテック人材のイメージが強い。他の企業でも、エンジンが世界中のファンを引きつけるイタリア・フェラーリも、CEOにIT業界からビーニャ氏を招いた(参照:「フェラーリCEO「EVでソフト投資急増せず。水素エンジン開発も」)。
「ライダー搭載で重大事故や死亡事故を最大2割削減」

今回ボルボは、EX90に最先端のデジタル技術をふんだんに盛り込み、同社の代名詞と言える安全技術を大幅に進化させた。同社が世界で初めて開発した3点式シートベルトや衝突安全はパッシブセーフティーであるが、ボルボが今回強化するのは事故のリスクを事前に検知して回避するアクティブセーフティーだ。
アクティブセーフティーを実現するためにEX90はセンサーの塊となっている。8台のカメラに5個のレーダー、16個の超音波センサーを搭載。それに加え、自動車大手としては初めて赤外線レーザーを使った高性能センサーのLiDAR(ライダー)を標準搭載した。
ライダーは最長250m先の歩行者や120m先にある道路上のタイヤのような小さくて暗いものを検知するという。ローワン氏は「ボルボの調査では、ライダーを搭載することで重大な事故や死亡事故を最大20%削減でき、衝突回避率を最大9%向上させられる」と話す。
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