英グラスゴーで開催されていた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は11月13日夜、「グラスゴー気候合意」を採択した。会期を1日延長し、文書の修正が続いた末の採択だった。

 最後まで焦点になったのは、石炭の扱いだ。13日午前の最終案では、「段階的に廃止する」だった記述が、採択直前のインドや中国の強い反対で、「段階的に削減する」という表現での合意となった。

 石炭火力の依存度が高く、2030年でも電源に占める石炭火力の比率が19%という見通しの日本にとっては、望ましい結果だったかもしれない。だが、世界の脱石炭の機運は確実に高まっている。

 COP26では有志の国や都市、企業が脱石炭や脱エンジン車の宣言に賛同する動きが広がった。日本はこうした流れを食い止める側に回ったが、それだけで十分だったのだろうか。

米国のケリー大統領特使とインドのヤダフ環境相は、COP26の会議終盤に話し込んだ(写真:AP/アフロ)
米国のケリー大統領特使とインドのヤダフ環境相は、COP26の会議終盤に話し込んだ(写真:AP/アフロ)

 「開発や飢餓撲滅に取り組まなければならない途上国が、石炭火力の廃止は約束できない」。COP26の会期を1日延長した13日午後。英国のシャーマ議長が最後の全体会合で合意文書の採択をとろうとした直前に、インドのヤダフ環境相が石炭の表現について異議を申し立てた。

 電源構成のうち7割を石炭火力が占めるインドにとって、「廃止」は受け入れがたい表現だった。同じく石炭火力の比率が高い中国も反対に回る。COP26は決裂するかもしれない、そんな雰囲気が広がった。シャーマ議長とヤダフ環境相の一対一のやりとりを見ていても、シャーマ議長が慌てていた様子がうかがえる。

 休憩を挟んだ後に、インドは「石炭火力を段階的に削減する」との表現を提案。欧州連合(EU)諸国や島しょ国など脱石炭に熱心な国々から「失望した」という声が上がるものの、最終的には合意文書の成立を優先し、「グラスゴー気候合意」は採択された。

予定していた11月12日までに合意文書がまとまらず、壇上で話し合うシャーマ議長。壇上まで距離があり、内容は聞き取れなかったが、各国の代表者が退席した後も話し合っていた
予定していた11月12日までに合意文書がまとまらず、壇上で話し合うシャーマ議長。壇上まで距離があり、内容は聞き取れなかったが、各国の代表者が退席した後も話し合っていた

 採択に当たり、シャーマ議長は「このプロセスについて、深く謝罪する」と語り、壇上で涙を見せて悔しさをにじませた。だが、議長を務めた英国にとっては悪くない成果だったかもしれない。こだわり続けた脱石炭について、合意文書に1つの道筋が明記され、今後のCOPの土台になるからだ。 

 合意文書には、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求することが改めて盛り込まれた。20年までに先進国から途上国に年1000億ドル(11兆4000億円)を支援するという目標を達成できなかったことについて「深い遺憾」と表現し、途上国に配慮した。

続きを読む 2/3 無視できない脱石炭や脱エンジン車の有志連合

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