洋上風力発電への注力は大きな賭けだった

 我々は、デンマークのエネルギー会社6社が合併して設立されたのですが、その中に洋上風力発電の開発を手がける会社がありました。戦略を考える際には、どの再エネにフォーカスするのか、石炭火力発電所やガス火力発電所からどのように脱却するかといったことが課題となりました。

 陸上風力発電と洋上風力発電の選択肢がありましたが、洋上の場合はごく小規模になることは明らかでした。ただし、その分野に全社を挙げて取り組めば、事業を拡大できるだろうと考えました。とはいえ、これは大きな賭けでした。うまくいくかどうかは分かりませんでしたから。

 それでも、洋上風力発電に力を入れるという大胆なアプローチを採用しました。また、2000年代後半当時は陸上風力発電がとても一般的で、多くの開発が進んでいたため、別の未開拓の分野で他社と差をつけるチャンスでもありました。これが、洋上風力発電に注力し、拡大しようとした理由です。

様々な課題がある中で、いつ頃に新しい産業をつくっていく自信を得たのでしょうか。

ノイベルト氏:一心不乱に新事業に打ち込んでいた09~11年は大変な年だったと言えます。「1~2年取り組んでみて、駄目だったらやめよう」というようなものではなかったんです。また、オーステッドの沿革の中では、特に集中して洋上風力発電に取り組んだ12年は特に重要です。ただこのときはまだ、化石燃料の開拓と発電に多く投資していました。

 化石燃料発電はまだ中心のレガシー事業でした。そして、洋上風力発電という新しい旅路に乗り出したんですね。しかし、12年に電力の価格が暴落しました。従来の化石燃料発電事業は金のなる木のようなものだったのですが、ガスの価格が下落したことで大変なプレッシャーがかかりました。そのときは販売価格がほぼ暴落してしまったという状況になり、事業が多過ぎるという問題を抱えていました。

デンマーク南部ニステッド沖の洋上風力発電所 (写真:Maya Matsuura)
デンマーク南部ニステッド沖の洋上風力発電所 (写真:Maya Matsuura)

 そこで、12年に急激な事業変革を行いました。重要な点は、私たちは旧事業で厳しい状況にはありましたが、「資金がそれほどないから、洋上風力発電に軽く投資しよう」といった感じで決断を下したわけではないということです。洋上風力発電に全力を傾け、一方で石炭火力発電所は一部閉鎖しなければならないと理解しました。そして同じ12年に、それまで事業の70%を占めていた石油・ガス事業の売却を決めました。

 未来は洋上風力発電にあると信じ、全力でそこに投資すると決めました。それと同時に、従来事業について大幅なコスト削減を実行。「何かに取り組むなら、それに全力で取り組む」という姿勢が、成功するための要素の一つだったと思います。

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