「開発者は風力より補助金が欲しい」という政治家の批判

およそ10年前までは多額の補助金が出ていましたが、政府はそれを削減しようとしました。どのように収益性を高めたのでしょうか。

ノイベルト氏:私たちがこの事業を始めたとき、洋上風力発電はまだ研究開発の段階、またはコンセプトのみの段階でした。08年から12年までの間に、最初の大きな発電所を構築し始めました。300~500メガワットのサイズです。

 私たちは技術面で豊富な知識を持っていましたが、それでも当時は多くの補助金を必要としていました。2000年代初期の発電コストは、一般的な北海の発電所でメガワット時当たり160~200ユーロでした。風力の状況が大変良い場所です。

 課題が浮かんできたのは12~13年です。コストを劇的かつ迅速に下げなければ、世間に受け入れられず、また政治家からも良い反応をもらえないという問題に直面しました。当時のオランダの首相が「洋上風力発電開発者は風力ではなく補助金が欲しいだけだ」と発言したことはよく知られています。

 私たちは既にマーケットリーダーではありましたが、自分たちの目標に対してかかるコストを明確にする必要がありました。ボトムアップ方式の分析ではなく、トップダウン方式のアプローチを取ったのです。当時はメガワット当たり165ユーロの電力コストがかかっており、20年の発電所建設までにコストを100ユーロまで下げる必要がありました。

 最初は「どうやったらそんなことができるのだろう?」と途方に暮れることもありました。しかし、コストダウンの可能性に賭けました。より大きな発電所やタービン、ケーブル、より重厚な基礎などを組み合わせ、ユーロ当たりの風力発電量をさらに増やせる可能性があったからです。1つひとつ実行してみると、サプライチェーンでのコストダウンも進み、16年にはメガワット時当たり100ユーロまでコストを下げることができたのです。

 私たちを含め、誰もがそれには大変驚きました。2012年には8年かかるだろうと思っていたのに、わずか4年しかかからなかったからです。さらに開発が大変迅速に進み、メガワット時当たり56ユーロまでのコスト削減に成功しました。こうした背景から、欧州北西部外でも洋上風力発電の高い需要が生まれ、この発電方法が広まることになったのです。

 16年には米国と台湾に進出し、海外展開を加速しました。現在では、洋上風力発電はコスト削減により需要が高まっています。もちろん、他の再エネに比べてコストが安いこと、化石燃料よりも安いということ以外にも、洋上風力発電のメリットはたくさんあります。

英国の東海岸の沖合で2020年に稼働を始めた洋上風力発電所
英国の東海岸の沖合で2020年に稼働を始めた洋上風力発電所

巨大な石炭火力発電所を保有していた

分かりました。改めて、事業構造の転換を決断したときのことを振り返ってもらいましょう。以前は化石燃料が主力の会社でしたよね。

ノイベルト氏:我々の以前のポートフォリオは、1つは北海における石油とガスの探査と生産、もう1つは大部分を石炭火力発電所をベースとする発電でした。私たちは、巨大な石炭火力発電所をデンマークに持っていました。

 08~09年に、重大な出来事が2つ起こりました。1つは、首都コペンハーゲンで開催された、第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)です。オーステッドの前身であったドン・エナジーの主要株主であり、またCOP15のホスト国であったデンマーク政府にとって、再生可能エネルギーへの転換は大きな議題でした。再エネは集中すべき議題として取り上げられました。

 2つ目は、私たちが石炭火力発電所の開発計画を展開していたことです。1.6ギガワット(GW)の大規模な発電所を、03年からドイツ北部で開発していました。開発開始から6年がたち、すでにこの計画に多くの資金を費やしており、ドイツ政府からサポートを受けていました。

 この計画はうまくいきそうになかったので、再考することになりました。発電所を完成させるか、そこで諦めるかの選択を迫られたとき、時代が変わっていることに気づいたんです。戦略を定め、従来の化石燃料エネルギー85%、再生可能エネルギー15%という割合を逆にしようと考えました。おそらく事業転換に30年はかかるだろうと見積もりました。

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