英グラスゴーで開催されている第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で途上国への温暖化対策の支援額の上積み表明が相次いでいる。先進国は2020年までに官民で年1000億ドル(約11兆4000億円)の途上国支援を約束していたが、実績が追いついていないためだ。米国や日本、欧州連合(EU)、ドイツの首脳から支援額の上積みが発表された。

 温暖化対策資金の使い道として、有力なのが風力発電だ。その市場がさらに拡大した際に主役となりそうなのが、洋上風力世界最大手、デンマークのオーステッドである。同社は15年ほどで、石炭や石油という「黒い」燃料を主体とする会社から、グリーンエネルギーを主体にする電力会社へと劇的な変貌を遂げた。

 オーステッドの経営については、時代の先読みの方法や過去の遺産の捨て方、事業構造転換の手法など、日本企業の参考になる点が多い。COP26の前に、古参の幹部であるマルティン・ノイベルト副CEO(最高経営責任者)に、同社の歴史をじっくり聞いた。長いインタビューなので2回に分け、今回は事業転換の秘訣について、次回では主に今後の再生可能エネルギー産業の展望を語ってもらう。

マルティン・ノイベルト氏。オーステッド副CEO。1973年生まれ。コンサルティング会社を経て、2008年にオーステッドに入社し、洋上風力発電事業のトップなどを経て現職。執務室には、事業パートナーである丸紅から贈られた扇子が飾られている。(写真:Maya Matsuura)
マルティン・ノイベルト氏。オーステッド副CEO。1973年生まれ。コンサルティング会社を経て、2008年にオーステッドに入社し、洋上風力発電事業のトップなどを経て現職。執務室には、事業パートナーである丸紅から贈られた扇子が飾られている。(写真:Maya Matsuura)

2009年ごろに洋上風力発電事業を強化した際は発電コストが高く、今と状況が異なりますね。社内外から否定的な意見も出たのではないでしょうか。当時、どのように洋上風力発電へのシフトを決断したのでしょうか。

ノイベルト氏:経営陣が推し進め、また株主に支援された戦略でしたが、大変挑戦的な決断でもありました。当時は、利益の90%をデンマーク国内の化石燃料事業で得ていましたから。当時とても市場規模の小さかった洋上風力発電を開拓することを決め、そこに全力を注いだのです。既存の発電事業を内部から変えようとはしませんでした。経営陣は、今すぐ変化を起こすと決めたのです。

 まず専門部門を立ち上げ、大規模な洋上風力発電事業を展開していきました。この組織を大幅に強化し、事業の各分野に最適な才能ある人物を内部でそろえ、強力なマネジメント体制を整えました。

 当時の小規模な洋上風力発電所を2~3年ごとに開発・建設計画を立て、実行に移してきました。大幅に事業規模を拡大するなら、1年に2~3カ所の建設が必要になると考えていました。大規模化にはサプライチェーンのパートナーが必要であることは明らかでした。

 そこで、独シーメンスから500基のタービン調達という大規模な提携を結びました。また、タービンに基礎とケーブルを設置する基礎設置船企業を買収しました。このように、「自分たちの洋上風力発電へのアプローチを事業化するには何が必要なのか」を考えていたのです。

 投資資金も明らかに足りなかったため、この開発事業に共同出資してくれるパートナーも必要でした。最初に提携したのはデンマークの年金基金です。それからオランダとカナダの年金基金、そして日本の商社の丸紅。これらが、欧州での洋上風力発電に対し初期に投資をしてくれました。その他複数の基金とも提携し、プロジェクトに要する資金の50%を提供してもらいました。

 ただもちろん、そこには問題がありました。そうした基金は技術や建設、開発、稼働、維持においてリスクを避けたいと考えていたんです。私たちは開発側やオペレーターとして、そうしたリスクを取り除く方法を見つけなければなりません。風力発電所に用いる技術が実際に役立つものであること、私たちが資金を再利用して会社の成長に使えることなど、出資元が安心できるような構造を整えました。

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