メンテナンスは発電所の収益に関わる
動画ではうまく表現できなかったかもしれないが、船はかなり揺れた。これまで何度も船に乗ってきたが、今回は特に揺れが大きいように感じた。途中、酔い止めの薬を飲みながら、なんとか写真や動画を撮り続ける。もちろん、エンジニアたちは慣れており、コーヒー片手にリラックスしながら、談笑している。

操舵(そうだ)室も見せてもらった。モニターに風力発電機の場所が表示され、そこに向かって進んでいることが分かる。ベテランの航海士で、英国の洋上風力発電所でもメンテナンス船を操船していたという。漁船など周辺海域の船の動きに注意をしていた。
1時間ほどの航海で、風力発電機の基礎に到着する。羽根の下に入ると、羽根の風切り音と波風の音が入り交じって聞こえる。エンジニアたちは、さっそく機材の交換に入る。風力発電の基礎の部分に入って操作をすると、先ほどまで勢いよく回っていた羽根の回転が止まる。その間に部品を手際良く交換する。
自然の力を利用する洋上風力なので、こうしたメンテナンスが非常に重要だ。消耗品である上に、故障で止まれば、その分発電量が減り、売り上げが減るからだ。オーステッドはシーメンスと連携し、データで常に風力発電の様子を把握し、交換が必要な部材を確認している。筆者が訪れた際には、3基の発電機が部品の交換を待ち止まっていた。

メンテナンスの精度は年を重ねるごとに上がっていくという。データで監視しているとはいえ、発電機の設置当初は手探りの部分もあった。機器の特徴をつかんで部品を交換し、エンジニアのスキルも向上することで、発電機が止まる期間も短くなっている。
この現場を統括しているのが、ニステッドが位置するロラン島出身のトーマス・アルメガード氏だ。「ほとんどのエンジニアがロラン島の住民で、この場所まで車で30分ぐらいの場所に住んでいる人が多い」と話す。火力発電のエンジニアが転職してくるケースもあるという。オーステッドは、地元の雇用創出に貢献している。
当初の取材予定では、デンマークの西部にあるエスビアウから30km沖合にある洋上風力発電所に行く予定だった。北海の波が高かったため、訪問先をニステッドに変更した。エスビアウ沖の洋上風力発電所はニステッド沖の3倍の距離があり、さらに船酔いしていた可能性が高かった。
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