「マスクは着けなくていいよ」──。8月下旬、出張先のデンマークで飲食店に入ると、逆にマスクを取るように促された。筆者は、英国で飲食店などの店内に入る際にはマスクを着用することが習慣になっている。しかし、デンマークでは飲食店内でもマスクをしている人は誰もいなかった。代わりに求められたのは、ワクチン接種の証明だった。

 8月下旬、デンマークの首都コペンハーゲンは、新型コロナウイルスなどなかったかのような雰囲気だった。飲食店だけでなく、タクシー車内などマスクが必要な場所はほとんどない。実際、街中でマスクを着用している人をほとんど見かけなかった。少し怖かったので、タクシーに乗車する際はそっと後部座席の窓を開けた。

デンマークのコペンハーゲンでは、屋内外を問わずマスクをしている人はほとんどいない
デンマークのコペンハーゲンでは、屋内外を問わずマスクをしている人はほとんどいない

 夏頃から欧州ではワクチン接種証明や陰性証明などを条件に渡航の規制が徐々に緩和され、人々の交流が活発になってきている。欧州空港協会によると、7月の欧州における乗客数は前年同月に比べ約2倍の1億3340万人だった。コロナ前の19年の水準のおよそ半分であるものの、回復基調にあるのは確かだ。

 欧州では20年3月頃から新型コロナが猛威を振るい、英国在住の筆者も1年半ほどロックダウンなど様々な規制下で、仕事と生活の行動範囲が限定され、取材はパソコンの画面越しのオンラインがほとんどだった。1年半の間に様々な企画を温めており、規制緩和とともに欧州各地での取材を再開している。コロナ対応の書類作成や検査などの準備に手間がかかるが、リアルの人に会って話を聞き、実物に触れて取材ができる喜びには代えがたい。冬には感染が拡大し、再び渡航が制限される可能性もあるため、行けるうちに取材をした方がいいという考えもある。

 英国は欧州各国とシステムが異なり、当初は欧州への渡航がしにくかったものの、8月頃から徐々に規制が緩和されていった。英国からデンマークへの入国は、取材予定日の1週間前まで入国時に自主隔離が必要だったため、出張はできないものと諦めかけていた。だが、1週間前に自主隔離の措置がなくなり、土壇場で準備を進め、デンマークへの入国が実現。1週間前の制度変更だったため、やや緊張して入国審査を受けると、審査員はワクチン接種証明をチェックした後に、笑顔で入国スタンプを押してくれた。

デンマーク・コペンハーゲンのコロナ検査会場。この会場では予約しなくても無料で検査を受けられた
デンマーク・コペンハーゲンのコロナ検査会場。この会場では予約しなくても無料で検査を受けられた

 デンマークは「ほぼノーマル」のような状態であるにもかかわらず、欧州の中では感染者が少ない国の1つだ。ここまで大胆なコロナ対策を取る裏側には、いくつかの仕掛けがある。1つは検査の充実だ。デンマークでは国内に多くの無料の検査会場がある。自国民はもちろんのこと、外国人でも検査を受けられる。実際に筆者は取材先の要請もあり、4日間の滞在中に2回のPCR検査を受けた。

続きを読む 2/3 外国人でもアプリに登録すれば、無料でPCR検査を受けられる

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この記事はシリーズ「大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。