96歳で亡くなった英国の女王エリザベス2世は、国内外で絶大な人気を誇った(写真=WPA Pool / Getty Images)
96歳で亡くなった英国の女王エリザベス2世は、国内外で絶大な人気を誇った(写真=WPA Pool / Getty Images)

 9月19日、英国の女王エリザベス2世の国葬がロンドンのウェストミンスター寺院で執り行われた。96歳で亡くなった女王は在位70年を超え、世界中の元首や首脳と交流があった。国葬には英王室や政府関係者のほか、天皇、皇后両陛下やバイデン米大統領やマクロン仏大統領、ニュージーランドのアーダーン首相など世界の元首や首脳らが参列し、女王に最後の別れを告げた。

 ロンドン橋作戦──。女王の追悼行事はこうしたコードネームで呼ばれ、数十年前から綿密な計画が練られてきたという。第2次世界大戦以降で最大という規模の警備体制が敷かれ、約1万人超の軍人や警察官が配備された。ウェストミンスター寺院の周辺は交通規制が導入され、一部の地下鉄駅も閉鎖。英国では、1965年のチャーチル元首相以来の国葬となった。

国葬を中継する大型スクリーンが設置されたハイドパーク。集まった人々は食い入るように中継を見つめていた
国葬を中継する大型スクリーンが設置されたハイドパーク。集まった人々は食い入るように中継を見つめていた

 ウェストミンスター寺院近くのハイドパークに足を運ぶと、人々の関心の高さがひしひしと伝わってきた。国葬を中継する大型スクリーンが設置され、多くの人が静かに国葬を見守り、ウェストミンスター寺院に女王の棺(ひつぎ)が運び込まれるときには、ほとんどの人が立ち上がり敬意を示す。最後に2分間の黙とうをささげ、国歌を合唱する際には、涙を流す人も見られた。

 ウェストミンスター寺院から運び出された棺は、途中で霊きゅう車に乗せられハイドバーク沿いなどを走り抜けた。見送るのは一瞬だったにもかかわらず、沿道には多くの市民が押しかけ、後方からはほとんど棺は見えないほどだ。

女王の棺を乗せた霊きゅう車がハイドパーク沿いの道路を走った。一瞬にもかかわらず、多くの市民が沿道に集まっていた
女王の棺を乗せた霊きゅう車がハイドパーク沿いの道路を走った。一瞬にもかかわらず、多くの市民が沿道に集まっていた

 エリザベス女王に対する国民の支持は絶大である。8日に女王死去のニュースが流れると、英国中に悲しみが広がった。筆者の小学生の息子には訃報を聞いた友人たちから電話がかかり、いつもはゲームの話題が中心の彼らが涙を流し、女王について語っていた。

 女王の棺は19日まで英議会議事堂に安置され、一般市民の弔問を受け付けていた。最長で20時間以上の待ち時間となっていたが、それでも列に並ぶ人が絶えなかった。多くの英国民がエリザベス女王の70年超の治世の間に生まれ育ち、苦楽を共にしてきたからだろう。

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