多くのアフガニスタン人たちが国外脱出を図り、首都カブールの空港に押し寄せた。同空港で避難民から有刺鉄線の壁越しに赤ちゃんを受け取る米兵(写真:提供:OMAR HAIDARI/ロイター/アフロ)
多くのアフガニスタン人たちが国外脱出を図り、首都カブールの空港に押し寄せた。同空港で避難民から有刺鉄線の壁越しに赤ちゃんを受け取る米兵(写真:提供:OMAR HAIDARI/ロイター/アフロ)

 8月中旬に、イスラム主義組織タリバンが制圧したアフガニスタンで、その後も混乱が続いている。タリバンは記者会見で「内にも外にも敵を欲しない」と述べ、融和的な姿勢を示していたが、ジャーナリスト家族の殺傷や市民への残虐行為が報告され、アフガンの人々はタリバンの統治に戦々恐々としている。首都カブールの空港では23日に、武装集団とアフガン警備隊や米独軍との銃撃戦が起きるなど治安が悪化しており、国外脱出は難航している。

 かつてアフガンを保護領とした英国は、歴史的なつながりからアフガン人が多い。英在住の40代のヤフタリさん(仮名)はクリーニング店でアイロンをかけ続けながら、常にアフガン情勢のニュースを聞いている。アフガンで殺害された非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師、中村哲さんの活動に感銘を受け、日本人に好印象を持っていることを話した後に、手を休めて筆者の質問に答えてくれた。

 家族は英国にいるが、親戚はカブールにおり、頻繁に連絡を取り合っている。「今のところは親戚に危害が及んでいないから大丈夫。タリバンは市民の安全を約束するようなことを言っているが、これからのことは本当に心配している。我々はタリバンを信用していない」

 彼らには苦い記憶がある。1996年~2001年までのタリバンの統治時代に、アフガン市民は厳格なイスラム法を強要された。女性は学校教育や家庭外での就労が禁じられた。ヤフタリさんは当時、アフガンを脱出し、英国に移り住んだ。

 今もカブールに残る親戚は、タリバン時代の恐怖心がなくならない。今回も脱出することを考えたが、欧米政府関係者とコネクションがある訳ではなく、もはやそれは難しいと絶望している。「とにかく争いや戦争はもうたくさんだ。我々はずっと戦乱状態にある」と嘆く。

 欧米諸国には怒りを感じている。「この20年間、状況は悪くなるばかりだった。欧米各国のアフガン関与は誰のためだったのか。先進国からの資金援助はあったが、我々庶民の暮らしがよくなった実感は乏しい。欧米はアフガンの天然資源が目的だったのではないか」

 ヤフタリさんの憤りは無理もない。アフガンの1人当たり国内総生産(GDP)は伸び悩んでいる。世界銀行によるとアフガンの20年の1人あたりGDPは508ドル(約5万6000円)で、最貧国と呼ばれる水準にある。国連世界食糧計画(WFP)は、国民の3分の1に当たる1400万人が飢餓に苦しみ、200万人の子どもが栄養不良状態にあるという。

続きを読む 2/2 自国民やアフガン人の退避支援は難航

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