7月7日の独フォルクスワーゲン(VW)がドイツ北部のザルツギッターで開催した電池工場の定礎式。大勢のドイツ人が集まる会場の中に、アジア人らしき一団がいた。興味を持って近づくと、中国語を話していた。
話しかけてみると、中国の電池大手、国軒高科の経営陣たちであることが分かった。同社にはVWが約26%出資し、VWの電池戦略に欠かせぬパートナーである。また、中国でヒットした上汽通用五菱汽車(ウーリン)の約50万円の電気自動車(EV)に電池を供給していることでも有名だ。
その中の1人が突然、日本語で切り返してきたので、取材の依頼をして急ぎ名刺を交換した。日本語を話した幹部は、程騫グローバル本社エグゼクティブバイスプレジデントだ。筑波大学大学院で博士号を取得し、NECに勤めた後で米アップルでも電池開発に従事した電池のエキスパートだ。VWが頼りにする国軒とはどのような企業なのか。後日、程氏に同社の戦略を聞いた。

この数年、電池の供給量を増やしています。世界全体でどれぐらいの生産能力がありますか。
程騫氏(以下、程氏):中国だけで100ギガ(ギガは10億)ワット時に迫る生産能力があります。2025年には300ギガワット時に達する目標があり、その内訳は中国が200ギガワット時、中国外が100ギガワット時になります。そのほとんどがベトナムになりそうです。同国のビングループと戦略的に提携しており、電池セルを同国で生産する予定です。
その次にドイツで電池セルを生産する予定です。最初は中国から電池セルをドイツに輸出し、ボッシュのゲッティンゲン工場を買収したので、そこでパッケージに仕上げる。欧州では一定量以上を欧州で生産しないと多額の関税がかかるので、将来的には現地生産で対応します。それからVWの電池生産をサポートしていきます。さらに米国でもEVシフトが進んでいて、大きな受注が入りそうです。

中国の他の電池大手とは、どのような違いがありますか。
程氏:我々は研究開発に力を入れていることと、電池材料に関する資源の権益を確保し、垂直統合を実現している特徴があります。寧徳時代新能源科技(CATL)や比亜迪(BYD)より、資源権益を保有しているのではないでしょうか。
中国では炭酸リチウムが採れる鉱山の権益を100%保有し、アルゼンチンでも塩湖系の炭酸リチウムの権益を保有しています。我々は正極材、負極材、電解液、セパレーター、電池ケース、モジュールのプラスチックパーツ、銅箔など、これらの全てを内製できる。サプライチェーンのセキュリティーとコストの優位性に自信があります。
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