独フォルクスワーゲン(VW)がドイツ北部のザルツギッターで開催した電池工場の定礎式。ショルツ独首相(右から3人目)がイベントに出席し、官民一体で電池産業を育てる姿勢を示した(写真:Mari Kusakari)
独フォルクスワーゲン(VW)がドイツ北部のザルツギッターで開催した電池工場の定礎式。ショルツ独首相(右から3人目)がイベントに出席し、官民一体で電池産業を育てる姿勢を示した(写真:Mari Kusakari)
                

 独フォルクスワーゲン(VW)は7月7日、ドイツ北部のザルツギッターで電池工場の定礎式を開催した。電気自動車(EV)シフトを進める同社はこれまで、アジアの電池企業からセルを調達してきたが、ここで2025年から初めて自社開発の電池セルを大量生産する。EV50万台分に相当する電池セル40ギガワット時を生産する予定だ。

 同社は30年までに200億ユーロ(約2兆7000億円)以上を投じ、欧州に6つの巨大電池工場を建設。年間200億ユーロの売上高を上げ、最大2万人を雇用することを見込んでいる。ザルツギッター工場はそのモデル工場と位置付けている。

 同社の意気込みは、イベントにも表れていた。工場内に巨大なスペースを設け、多くの取引関係者や従業員が集結。プロの司会者が進行し、イベント用のビデオも手の込んだものだった。

 そして、定礎式の目玉はショルツ独首相の来訪だった。会場のスクリーンに映し出されたショルツ首相が、電池工場の建設予定地を回る。案内するのはヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)だ。このイベントの2週間後にCEO解任の発表があるが、当時は知る由もなかった。

ショルツ首相(壇上中央)はVWのザルツギッター工場で、「本日はドイツと欧州の自動車産業にとって素晴らしい日になった」と述べた
ショルツ首相(壇上中央)はVWのザルツギッター工場で、「本日はドイツと欧州の自動車産業にとって素晴らしい日になった」と述べた

 ショルツ首相は真新しい電池ラボも見学し、最後に拍手で会場に迎えられる。登壇すると、「VWは持続可能で気候と調和したモビリティーの未来像を示している。私たちは一緒になり、ここザルツギッターで未来形成に大きく貢献できるための基礎を築く」と宣言した。

 さらに、電池産業の重要性について言及する。「これまで重要なパーツをアジアから調達してきた。新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻によりサプライチェーンのリスクが高まっている」「ドイツで電池を生産することは極めて重要だ」

 ここに欧州電池産業のポイントがある。EVシフトを進める欧州だが、その基幹部品である電池については中国の寧徳時代新能源科技(CATL)や韓国のLGエネルギーソリューション、サムスンSDIなどのアジア勢に頼っている。そこに危機意識を持った欧州委員会が17年、「バッテリーアライアンス」を結成し、欧州の電池産業を支援している。

 では、VWはどのようにアジア勢に追いつき、追い越そうとしているのか。ザルツギッターでは5つの特徴を見た。

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