独フォルクスワーゲンは2021年1~6月期に、全世界で17万939台のEVを販売した
独フォルクスワーゲンは2021年1~6月期に、全世界で17万939台のEVを販売した
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 独フォルクスワーゲン(VW)は7月20日、2021年1~6月期の電気自動車(EV)販売台数を発表した。全世界で前年同期比2倍以上となる17万939台のEVを販売。プラグインハイブリッド車(PHV)と合計で21年に100万台を販売する計画に手応えを見せている。

 しかし、1年前の今ごろは生みの苦しみの最中にいた。同社が社運をかけて開発した旗艦EV「ID.3」のソフトウエアに多くの問題が見つかり、予定されていた20年9月の納車開始が危ぶまれていた。特にテスラが実施しているような通信経由でソフトウエアを更新する「OTA」と呼ばれる技術を確立できていなかった。「開発を急ぎ過ぎたツケだ」と、日本メーカー関係者からは冷ややかな声が漏れた。

 その最前線に立ち陣頭指揮を執ったのが、当時VW乗用車ブランドのEV担当取締役だったトーマス・ウルブリッヒ氏だ(その後、技術開発担当取締役に就任)。同氏が「最悪のバグ(不具合)だった」と明かすトラブルを乗り越え、なんとか9月の納車に間に合わせた。VWは20年にCO2規制をクリアできず1億ユーロ(約130億 円)以上の罰金を払ったとみられているが、ID.3の出荷が遅れていたらその額はさらに膨らんでいたかもしれない。

 社運をかけたプロジェクトでどのようなトラブルがあり、どのように危機を乗り越えたのか。VWの「ミスターEV」とも言えるトーマス・ウルブリッヒ氏に話を聞いた。

1992年VW入社。主に生産部門を担当し、2014年からVW乗用車ブランド取締役。21年2月から現職。EV開発を主導する。
1992年VW入社。主に生産部門を担当し、2014年からVW乗用車ブランド取締役。21年2月から現職。EV開発を主導する。

最初の旗艦EVであるID.3の生産をするまではトラブル続きだったと聞きます。ソフトウエアの問題をどのように解決しましたか。

トーマス・ウルブリッヒ氏(以下、ウルブリッヒ氏):2017年の社内決定により開発期間を短縮したため、20年の出荷前は厳しい状況でした。我々はソフトウエア関連の問題を抱えていた。それは大問題でしたが、開発プロセスを変更し、スピードを速めサプライヤーと密接に連携しながら、一つひとつ問題を乗り越え、目標を達成しました。

ただ初期モデルについては、顧客がソフトウエアをインストールするために、整備工場に持ち込む手間がかかります。なぜそのような決定をしたのでしょうか。

ウルブリッヒ氏:EVの魅力的な要素として将来的にソフトウエアが鍵になるため、そのような決定を下しました。整備工場に持ってきてもらうことで、遠隔操作でソフトを更新するオーバー・ジ・エア(OTA)の搭載ができます。それ以降は、整備工場に持ちこまなくてもOTAで、充電パフォーマンスなどに関するソフトのアップデートができるようになる。顧客からの要望に応え、アプリケーションのバグを修正することもあるでしょう。

EVを含めた自動車開発においてソフトウエアの重要性が高まっています。どのような体制を整えていますか。

ウルブリッヒ氏:VWでは技術開発における大規模な組織改革を進めているところです。従来のエンジン開発を中心とした組織から、機能別の組織につくり直しています。構成部品やシステムごとに組織を編成し直し、その中でソフトウエア専門組織を立ち上げました。現在は3000人ほどのソフトウエアエンジニアが属しており、今後はさらに増やしていきたいと思います。

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