世界最大の自動車部品サプライヤーが、その強力なビジネスモデルを世界に示すような工場だ。

 ボッシュは2021年6月、独東部ドレスデンに半導体の新工場を開いた。同社の単独投資としては過去最大となる10億ユーロ(約1400億円)を投じた。さらに22年7月13日に26年までに総額30億ユーロ(約4200億円)を投じて、開発や生産を強化する方針を示した。ボッシュのシュテファン・ハルトゥング取締役会会長は、「マイクロエレクトロニクスは未来そのものであり、ボッシュのあらゆる事業分野での成功に不可欠なものだ」と語った。

 同社は様々な製品を手がけるが、半導体事業も主力で1958年から内製を始め、車載センサー半導体では世界首位だ。自社開発の半導体を自動車システムに組み込み、システム一式で付加価値を高めて販売している。新車1台に搭載するボッシュの半導体の数は、2016年に平均9個以上だったのが19年には約2倍の17個以上に増えた。

 21年8月には、ボッシュの半導体事業が世界的にも注目を集める場面があった。半導体が不足する中で、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がボッシュとルネサスエレクトロニクスを名指しで批判したためだ。「我々は特定の“標準的な”自動車向け半導体についてサプライチェーンの極端な制約下で運営している。最も問題なのは、ルネサスとボッシュだ」とツイッターで述べた。

21年6月に開催されたボッシュの半導体事業の発表会。当時のメルケル独首相(左上)や欧州委員会のベステアー上級副委員長もオンラインで参加した
21年6月に開催されたボッシュの半導体事業の発表会。当時のメルケル独首相(左上)や欧州委員会のベステアー上級副委員長もオンラインで参加した

 確かにボッシュはテスラには半導体を供給している。マスクCEOの発言についてボッシュの半導体事業の運営責任者であるパトリック・ライネンバッハ氏に聞くと、「我々はすべての顧客に同じように対応している」という答えだった。ボッシュとルネサスが特に供給で遅れていたか否かは分からないが、車載半導体でボッシュの存在感が高まっているのは確かだ。

 今年7月13日の記者会見で、ボッシュのハルトゥング会長は、「我々は半導体の絶え間のない需要増加に備えている。この微小な部品は大きな事業になる」と強調。同日、日系メディアでは初めて最新技術を注ぎ込んだドレスデンの半導体工場を取材する機会を得た。

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