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 新型コロナウイルスの流行によって企業を取り巻く環境が大きく変わったことを示す象徴的な企業の1つが、民泊世界最大手の米エアービーアンドビーだ。

 2019年11月、同社は英ロンドンで国際オリンピック委員会(IOC)の最上位スポンサーになると発表した(参照:上場控える米エアビーアンドビー、五輪に550億円を投じる意味)。発表会に出席した同社の共同創業者であるジョー・ゲビア氏は、創業わずか10年超で五輪の最上位スポンサーとなることに対する高揚感に包まれていた。

 それからわずか半年で、エアビーを奈落の底に突き落とすような事業環境になってしまった。新型コロナウイルスの流行で旅行ができなくなり、民泊の需要は激減した。同社は五輪の最上位スポンサーになったが、東京五輪・パラリンピックの延期で宣伝活動が難しくなった。社員の急増によるオフィスの確保が悩みだった同社が、5月に全社員の25%に当たる1900人を削減する方針を示した。20年に予定していた上場については、今のところ延期するか否かを明言していない。

 スタートアップの雄は、この苦境にどのように向き合うのか。同社が力を入れているのが、ホストが提供するオンライン体験サービスだ。以前からホストによる旅行先での体験サービスの提供に力を入れてきたが、現在はオンライン体験の拡充に注力している。4月上旬からサービスを始め、世界各地の著名シェフによる料理教室や動物との触れ合い体験などが人気を博している。

 さらにこの仕組みを発展させる。7月16日、エアビーとIOC、国際パラリンピック委員会(IPC)は、オリンピアンやパラリンピアンがホストとしてオンライン体験を提供するイベント「サマーフェスティバル」を始めると発表した。22日に予約の受け付けを始め、東京五輪の開会式が予定されていた24日から5日連続で100人以上の五輪出場選手や出場予定選手がオンライン体験を提供する。テニスの大坂なおみ選手やバスケットボールの八村塁選手などがホスト役になり、トレーニング方法や思考法などのレッスンを開く。ゲストの参加費用は平均で25ドル(約2700円)程度になるという。

 ゲビア氏に今後の旅行業界や経営の展望のほか、アスリートが主催するオンライン体験イベントの狙いなどを聞いた。

1981年米国生まれ。ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン卒。2008年、エアビーアンドビー創業。プロダクト開発チーム「Samara」の最高責任者。写真は19年11月、ロンドンでIOCの最上位パートナーになることを発表した際の様子

新型コロナウイルスの流行により世界で旅行需要が急減し、多くの航空会社や旅行代理店が経営危機に陥るなど、旅行業界が窮地に陥っています。

ジョー・ゲビア氏(以下、ゲビア氏):旅行業界が困難に直面しています。毎日、世界中が新型コロナウイルスを理解し、対処するための情報が少しずつ出ています。海外旅行や出張が新型コロナ以前のレベルに戻るには、少し時間がかかると思います。

 そこで、我々は主に2つの挑戦をしています。「Go Near」というキャンペーンで、自宅の近隣で宿泊するニーズを取り込むことです。自宅の近くの宿を予約し、車で移動するなど、国内旅行は大幅に増加しています。人々はあまり遠くに行かず地元を旅行していますが、家族などと豊かな時を過ごしているのです。

 もう1つが、オンライン体験です。旅先などでのリアルな体験ができないため、オンライン体験を提供するというアイデアが生まれました。新型コロナの危機に直面していなかったら、我々はオンライン体験というアイデアにたどり着かなかったかもしれません。

 オンライン形式への移行後、わずか1カ月で上位のホストは2万ドル(約214万円)の売り上げを記録しました。数カ月で、オンライン体験の予約総額は200万ドル(約2億1400万円)以上に達しました。

エアビーアンドビーは、オリンピアンやパラリンピアンがホストとなるオンライン体験を提供する

24日から5日連続で、オリンピアンやパラリンピアンがオンライン体験を提供するサービスを始めます。どのような狙いがあるのでしょうか。

ゲビア氏:オンライン体験の基盤を生かし、IOC、IPCと共同で「サマーフェスティバル」を開催します。オリンピアンやパラリンピアンがスポーツや洞察、知識、物語を世界中の我々のオーディエンスと共有できるようになります。

 世界中の観客にお気に入りのアスリートを観戦し、つながり、そして関わるための新しい方法を提供します。人々は自宅からアスリートと交流できるのです。これはアスリートへの経済支援にもなります。ホストとしてオンライン体験を提供することで、直接的な収入を得られるからです。