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 欧州大失業の第2回で報じたように、スペインでは新型コロナウイルス流行で景気後退が著しく、失業率が欧州で最悪のレベルまで上昇している。それに伴い、貧困層も拡大しつつある。

 スペイン政府はこうした現状を改善するために、5月末に最低所得保障制度(ベーシックインカム)の導入を決めた。これは、貧困層への支援や経済格差の縮小の処方箋として、世界的に注目される制度だ。

 スペインでは都市封鎖(ロックダウン)が解除されたものの、7月上旬に再び北西部ガリシア州と北東部カタルーニャ州の一部地域でロックダウンが実施され、依然として厳しい状況が続く。今回はスペインで導入されるベーシックインカムについてその内容を詳しくお伝えする。

欧州大失業:目次(予定)
第1回:恐怖の秋、雇用維持策切れで英失業率4倍も
第2回:スペイン、「失業率25%」にあえぐ当事者の肉声
第3回:世界初? スペインのベーシックインカムの狙い
第4回:山森教授「ベーシックインカムの真の姿とは」

 世界が注目する制度の導入が、スペインでついに決まった。スペイン政府は5月29日、最低所得を保障する制度(ベーシックインカム)の導入を閣議決定。6月中旬から申請の受け付けを開始した。

スペインのベーシックインカムについて説明する第2副首相のパブロ・イグレシアス氏。急進左派ポデモス党首で、ベーシックインカムの導入を訴えてきた(写真:代表撮影/Agencia EFE/アフロ)

 ベーシックインカムは長く、その必要性が議論されてきた。その定義は、「政府がすべての人に必要最低限の生活を保障する収入を無条件に支給する制度」とされる場合が多い。

 2016年にスイスで導入の是非を問う国民投票が実施されたが、反対多数で否決された。17年と18年にフィンランドで社会実験として期間限定で実施されるなど様々な動きがあるものの、国単位で本格導入された事例はない。

 それでは、スペインは世界初の導入になるのだろうか?

 結論から言うと、スペインの制度はその対象を低収入の生活困窮者に限定しているなどの理由から、専門家たちは「本来のベーシックインカムではない」と指摘する。

 とはいえ、ベーシックインカムという概念の下で、一定数の人々の最低所得を保障するため、画期的な制度ではあるだろう。具体的には、スペインの低所得者層とされる約85万世帯、約230万人を支援の対象とする見通しで、これはスペインの総人口の約4700万人のおよそ5%を占める。

 社会保障担当大臣のエスクリバ氏は、ロイター通信のインタビューでベーシックインカムの目的を「極度の貧困を根絶することにある。富の再分配という側面では、他の欧州諸国が設けている同様の制度を上回る効果をもたらす可能性がある」と語っている。

 収入と扶養家族の人数に応じて、世帯月収が462~1015ユーロ(約5万6000~約12万2000円)になるように不足分を銀行振込で支給する計画。政府は年間30億ユーロ(約3600億円)の費用がかかると推計している。