欧州大失業の第1回で書いたように、欧州各国では新型コロナ流行による景気悪化の影響が広範囲に及び、雇用維持制度の期限が切れる今秋以降に失業率が急上昇しそうだ。
その中でも特に深刻なのがスペインだ。新型コロナ流行で大きな被害があった。3月下旬に「スペイン、介護施設で遺体放置も イタリアを上回る医療崩壊の苦境」を掲載したが、人口当たりの感染者数と死者数は、世界の中でも特に高い水準になってしまった。
もともと失業率が高かったところに、新型コロナの流行とロックダウンが直撃し、2020年1〜3月の失業率は13.9%で、4月時点の失業者は約344万人。産業基盤が弱いうえに主力の観光業の不振が長期化する恐れがあり、経済協力開発機構(OCED)の予想によると、同10〜12月の失業率は最悪シナリオで25.5%と欧州でも突出した高さになりそうだ。
スペインで暮らす人々の仕事や生活は今、どのような状況なのか。現地の失業者や経営者など様々な人々の肉声をお伝えする。
目次(予定)
第1回:恐怖の秋、雇用維持策切れで英失業率4倍も
第2回:スペイン、「失業率25%」にあえぐ当事者の肉声
第3回:世界初?スペインのベーシックインカムを読み解く
第4回:山森教授「ベーシックインカムの真の姿とは」
スペインの人々は今年、春の訪れを自宅で迎えることになった。例年は3月ぐらいから欧州の中ではいち早く暖かくなり、観光客が増え、街が活気に包まれる時期を迎える。だが、今年は新型コロナウイルスが猛威を振るい、3月14日に非常事態宣言を出して都市封鎖(ロックダウン)に突入。非常事態宣言が解除されたのは6月21日で、実に規制は約100日間に及び、イタリアのそれより長かった。
経済活動がほぼ停止したため、もともと悪い雇用環境がさらに悪化し、2020年1〜3月の失業率は13.9%に上昇した。この数字の深刻さを伝えるためにスペインで暮らす人たちにアプローチしたところ、実際に失業の憂き目にあった数人が取材に応じてくれた。1人目はスペイン・バルセロナに18年間住むウルグアイ移民のアルフレッド・ヴィアーナさん(40代、男性)だ。黒いTシャツ姿でビデオ通話の画面に現れたヴィアーナさんは、静かに身の上話を語り始めた。

ヴィアーナさんにとって、ロックダウンは最悪のタイミングで訪れた。長く働いてきたホテルや観光関連の仕事は雇用が不安定だったため、手に職を付けようとバイクの整備技術を身に付け、この数年はバイクの販売や整備の会社で働いてきた。2019年に以前の会社を解雇されたが、就職活動を続けバイク販売会社にセールスマンとして入社できることになった。
そんな喜びに満ちたヴィアーナさんをコロナショックが襲った。そのタイミングが悲しい。3月7日から働き始めてすぐに、バルセロナでも新型コロナの猛威が振るい始める。「最初は多くの人が深刻に受け止めていなかった」(ヴィアーナさん)が、一気に感染が広がり、3月14日にロックダウンに突入した。
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