内燃エンジン(ICE)車を中心とするイタリアの高級車メーカー、フェラーリ。2025年に同社初となる電気自動車(EV)を発売する予定であり、30年には新車販売に占めるEV比率を4割にする目標がある(参照:フェラーリ本社で見た魂のエンジン、「30年にEV4割」の勝算は?)。一般的にEVは車種ごとの差異化が難しく、利益率を下落させる懸念がある。フェラーリはEVでどのような特長を出し、利益率を高めていくのか。21年9月に同社の最高経営責任者(CEO)に就任したベネデット・ビーニャ氏に話を聞いた。

ベネデット・ビーニャ氏
ベネデット・ビーニャ氏
1995年、スイスの半導体大手STマイクロエレクトロニクスに入社。2016年から微小電子機械システム事業やセンサー事業などを統括するグループのプレジデントを務める。自動車産業向けのビジネスにも従事してきた。21年9月、フェラーリCEOに就任

まず、自動車業界で重要性の高まるソフトウエアと電動化についてお聞きします。ビーニャさんは長年、半導体産業に携わっていた実績がありますね。

ベネデット・ビーニャCEO(以下、ビーニャ氏):ほんの数年間です(笑)

いやいや、26年間携わっていましたよね(笑)。まずはEVにとって、ソフトウエアの重要性をお話しください。自動車の制御だけでなく、車内のインフォテインメント(情報娯楽)は近年大変重要になってきています。米テスラや中国メーカーは、ソフトウエアを非常に重視しています。

ビーニャ氏:私たちは、EV開発をソフトウエアの領域から始めました。自動車業界のトレンドは明らかです。自動運転、コネクテッド、カーシェアリング、電動化の4つです。 電動化は非常に重要です。

 そして、フェラーリのソフトウエアは多大な能力を持っています。ユニークで違いをつけるクルマをつくるために、ソフトウエアは重要です。フェラーリ用のソフトウエアを、運転する人の意見を聞かずに開発する気はありません。顧客は、運転に関連する感情を味わいたいのです。運転しない人には、そうした感情が分かりませんからね。我々の顧客は、運転中に新聞を読んだり、インターネットで物を買ったりしたいわけではないでしょう。

 10年前から始まった電動化、デジタル化の動きにおいて、フェラーリは良い機会を得られる立場にいると思います。すべての詳細を話せませんが、運転する人に多くの機能を提供するというのが現在の一般的な風潮です。

 EVとソフトウエアをフェラーリ独自の方法で開発していくのが、今の計画です。フェラーリ独自の方法でEV用のソフトウエアを作っているように、インフォテインメントも同様の方法で開発していきます。

今後はEVとICE車はどのようなバランスになるのでしょうか。

ビーニャ氏:2026年には40%をICE、60%をEVとハイブリッド(HV)となり、2030年には20%をICE、40%をEV、40%をHVにするのが目標です。さまざまな種類の製品を提供し、顧客にベストなクルマを選んでもらいます。私たちが選ぶのではありません。

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