VW社長「テスラは我々のベンチマークだ」
実際、英ロンドンではモデル3を目にする機会が増えている。英北部グラスゴーの産業用冷蔵設備会社、スター・レフリジレーションは、EVのリース利用を全社的に進めている。今年からモデル3を利用しているアンディ・ピアソン社長は、「事業や社員のCO2削減のためEV導入を決め、特にテスラの先進性には満足している」と話す。
テスラはベルリン工場の稼働が遅れる中、米国や中国から欧州への輸出を増やしている。欧州ではEV需要が高まり、政府支援も手厚いことから、欧州販売に力を入れているようだ。

VWとテスラが互いをかなり意識しているのは間違いない。象徴的な場面があった。20年9月にテスラのマスクCEOがVW本社のある独ヴォルフスブルクの空港にプライベートジェットから降り立つと、VWのヘルベルト・ディース社長が出迎えた。
そのまま滑走路で、マスクCEOがID.3を運転し、助手席にディース社長が乗り込み、2人はEVについて語り合った。しかも、ディース社長はその時の動画をSNS(交流サイト)のリンクトインで公開している。保守的なイメージがあるVWが、マスクCEOのお株を奪うようなオープンな姿勢と情報発信をみせた。
ディース社長は、昨年11月の自動車業界のイベントで「テスラは我々のベンチマークだ」と発言。社内ではソフトウエアなどでテスラに後れをとっていることを示し、社内の意識改革と開発強化を促している。テスラは高級車が主体で、VWグループの独ポルシェや独アウディのブランドイメージを奪われかねないため、危機意識を強めている。もはやディース社長は、「打倒テスラ」という意識を隠していない。
一方のマスクCEOは、VWを挑発している。6月10日にEV「モデルS」の上位機種を発表した際には、「どんなポルシェよりも速く、どんなボルボよりも安全だ」と述べた。
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