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 新型コロナウイルスの流行による景気後退で、世界が大失業時代に突入している。国際労働機関(ILO)は、世界で労働者の約半数に当たる16億人が生計を失う危機にさらされていると発表した。

 その中でも感染者や死者数が多く、経済的なダメージも大きな欧州は、失業者が大幅に増えそうだ。欧州各国では失業者への安全網の整備や、経済格差の是正が従来以上に差し迫った課題になっている。

 短期的な安全網としては、政府が従業員の賃金の一部を肩代わりする雇用維持制度がある。欧州主要国がこの制度を導入し、足元では失業率の上昇は抑えられている。ただ、これは時限的な措置であり、人々は仕事や生活に対する不安を募らせている。

 中長期的に欧州各国はどのように失業者を救い、格差を是正しようとしているのか。失業者の実態に加え、スペインで導入される最低所得保障(ベーシックインカム)について詳しく伝える。

目次(予定)
第1回:恐怖の秋、雇用維持策の期限切れで失業者が激増
第2回:最悪の失業率25% スペインの失業者に実態を聞く
第3回:世界初? スペインのベーシックインカムを読み解く
第4回:山森教授「ベーシックインカムの真の姿とは」

 国際通貨基金(IMF)は6月24日に世界経済見通しを改定し、「世界経済は『大封鎖』に陥り、大恐慌以来で最悪の景気後退だ」と述べた。その中でも特に経済的なダメージが大きいのが欧州だ。IMFの予想では、ユーロ圏全体の2020年の実質経済成長率がマイナス10.2%と主要地域では経済縮小幅が最も大きくなる。英国のそれは同じくマイナス10.2%と、約300年ぶりの縮小幅になる見込みだ。

 ところが、欧州連合(EU)が6月3日に発表したデータによると、4月のユーロ圏全体の失業率は7.3%で前月から0.2ポイントの悪化にとどまった。4月の英国の失業率は3.9%と前月からほぼ横ばいだった。ユーロ圏だけで約1200万人の失業者がいると想定されているが、急増しているわけではない。2010年以降のユーロ危機の際には13年に失業率が12%を超えており、その時よりもまだ低い水準にある。

独ルフトハンザ航空の従業員は、人員削減の計画に抗議する集会を開いた(写真:ロイター/アフロ)

 3月から4月は欧州主要国で都市封鎖(ロックダウン)が実施され、食品スーパーや薬局を除くほぼすべての商店が営業を禁止されるなど経済活動の大半が止まった。それにもかかわらず失業率が急上昇しなかったのは、欧州各国が雇用維持制度を導入したためだ。

 同制度は政府が従業員の賃金の一部を肩代わりし、雇用を守るものだ。政府が企業に対し、従業員を解雇する代わりに労働時間を短縮するよう促し、減少した給与の一部を補填する。

 2008年のリーマン・ショック後にドイツが同制度を拡大適用したことが、失業を抑制できた要因の1つと考えられており、ドイツの制度を参考にしている国が多い。