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働き方を変える機会を逃せば損失に

日本は英国に比べて出勤しないとできない仕事が多く、在宅勤務への切り替えが難しいという指摘もあります。

グラットン氏:それは違うのではないでしょうか。新型コロナの流行によって、我々は働き方を変えられるチャンスを得ました。これを良い機会と捉えられなければ、日本にとって大きな誤りになると思います。

 私は安倍晋三首相が主催する人生100年時代構想会議に参加しました。そのときに安倍首相が言及していたのは、より多くの女性の労働市場への参加と、東京から地方に人口を移動させることでした。新型コロナの流行で、こうした動きが加速するかもしれません。日本が以前と同じ働き方に戻ってしまうのは、変化の機会を逃すという点で大きな損失です。

 私たちには仕事において既に染まってしまっている悪習があります。日本社会にもあると思います。ならば、今こそが「私たちはどのように働きたいのか?」を自問してみる良い機会ではないでしょうか。

 もし私が日本で企業を経営しているとしたら、従業員と話し、皆が将来の仕事に対してどう思っているかを理解しようとするでしょう。企業が前に進んでいくためには、従業員の考えていることがとても重要だからです。

英国に話を戻しましょう。英金融大手バークレイズグループは全面的に在宅勤務を続けていますが、7月から全世界で1%未満の社員をオフィスに戻すなど、オフィスを活用する動きが少しずつ始まっています。今後、企業ではどのような働き方が広がると思いますか。

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授は、新型コロナウイルスの流行以降、在宅勤務を続ける

グラットン氏:ハイブリッド型の働き方に移行すると思っています。先ほどお話しした中国のコールセンターに関する調査で分かったのは、在宅勤務の実験後にオフィスに戻りたいと思っていた人は50%でした。

 ロックダウンが終わっても、みんながオフィスに戻りたがるとは思いません。今後は時には在宅勤務し、時には各地域のハブで、時にはオフィスで働くという勤務形態が広がるのではないでしょうか。

 特に大都市では中心部に集まるのではなく、各地にオフィスとなるハブ空間を設ける企業もあるでしょう。英ブリティッシュ・テレコム(BT)は長年、各地域のハブを利用する勤務形態を採用してきました。ある銀行のCEOも、各店舗をオフィスハブとして使うべきだろうと言っていました。そして、オフィスの仕事においては、「オフィスで何をするか?」ということに注目すべきです。