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 新型コロナウイルスの流行(パンデミック)を契機に、世界で働き方が大きく変わった。中国では1月から、欧州各国や米国各州では3月から外出が制限され、ほとんどのオフィスワーカーが在宅勤務(リモートワーク)に入った。

 徐々に規制が解除される中、在宅勤務は一過性の働き方なのか、継続されていくのか、世界的に様々な議論が交わされている。トレンドの先頭を走る米シリコンバレーでは対応が割れている。ツイッターが世界の全従業員に対し無期限で在宅勤務を認める一方、アップルはオフィス勤務に戻していく方針を示している。

 欧州の中でも特に新型コロナの被害が大きかった英国では、オフィスのあり方が大きく変わりそうだ。5月11日から自宅で仕事ができない人の出勤が許可されているものの、オフィスへの戻りは鈍い。英銀行大手バークレイズは7月から全社員の1%を出勤させ、エンジニアリング大手のアトキンスも全社員の1〜2%を出勤させる予定だ。

 そもそも英国が、今のオフィスワークの原型を作ったと言える。18世期後半に起こった産業革命によって英国内の人々は仕事を求めて都市に集中。工場やオフィスに定時に通勤する働き方が定着し、世界中に広がった。東京と同じく過密都市である英ロンドンの働き方は、2020年の新型コロナの流行でどのように変わっていくのか。

 今回は街の様子が分かるように短い動画も用意したほか、著書「ワーク・シフト」「ライフ・シフト」で世界的に著名な働き方改革の大家であるロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授にも話を聞いた。多角的にロンドンの今をリポートし、「コロナ後」の働き方やオフィス、街のあり方を考える。

目次(予定)
第1回:「通勤が怖い」。静寂の英ロンドン
第2回:「英金融街、もう高層ビルには戻れない」
第3回:ロンドン脱出組が急増。不動産価格が急落も
第4回:リンダ・グラットン教授「悪い習慣見直しの好機に」

6月8日の英ロンドン中心部の電車では、20ほどの座席がある車両に1人しか乗車していなかった。人同士の距離を取ることを促すサインがあちこちに貼られている

 英ロンドンから人いきれが消えたーーー。6月8日朝、ロンドン中心部で鉄道や地下鉄に乗った。普段の通勤ラッシュ時には非常に混雑し、車内は人の熱気が立ち込めるが、新型コロナウイルスの流行(パンデミック)で状況が一変した。同日の電車はガラガラだった。

 英国は5月11日からロックダウンを一部解除しているものの、ロンドン中心部にはあまり人が戻っていない。下は5月22日に撮影した動画だが、ロンドン中心部の様子は6月に入ってもこの時と大きく変わっていない。

(撮影:永川智子)

 屋外なので人いきれというと大げさかもしれないが、繁華街の中心にあり、普段は多くの人が集まり熱気があるピカデリーサーカスも、今は人影がまばらだ。金融関係者が集い、往来する金融街シティの中心的なエリアも静寂に包まれている。英国では自宅で仕事ができない人の出勤が許可されているが、今のところ大半の従業員は出勤していない。