仏ルノーの新しいリーダーが経営再建を進めている。2018年11月に同社と日産自動車の会長だったカルロス・ゴーン氏が逮捕されてから、日産と三菱自動車の3社連合の間で主導権争いが表面化してきた。経営の混乱から日産の社長は、19年に西川広人氏から内田誠氏に交代した。

 ルノーのCEO(最高経営責任者)は、ゴーン氏が逮捕された後にティエリー・ボロレ氏が就任するも19年10月に解任され、空席となっていた。その中で20年7月に、新CEOに就任したのが、独フォルクスワーゲン(VW)傘下セアト前CEOのルカ・デメオ氏だった。トヨタ自動車で小型車「ヤリス」の商品企画に関わり、イタリアのフィアット(現ステランティス)で経験を積んできた。

 就任の初年度は新型コロナウイルスの感染拡大が直撃。販売台数が急減するとともに、43%出資する日産の業績低迷などの影響で、80億800万ユーロ(約1兆650億円)の最終赤字に沈んだ。また、先行していた電気自動車(EV)では競争が激しくなっている。デメオCEOは経営再建とEV強化の両立という難しいかじ取りが求められている。

ルノーのルカ・デメオCEOはEVシフトを強化している(写真:ロイター/アフロ)

 ルノーのルカ・デメオCEOが経営改革を進めている。1月には中期経営計画を発表、4月下旬の株主総会でもその進捗を説明した。その中で、特に強調しているのがEVシフトの強化だ。

「ハイブリッドでトヨタ、EVではテスラを上回る」

 株主総会でデメオ氏は「21年1~3月期の新車販売の4台に1台が電動車」だと強調。その上で、かつて在籍したトヨタ自動車で手がけたこともある車種の名前を挙げた。「ハイブリッドのクリオはトヨタのヤリスハイブリッドより売れている」。さらに「EVではテスラやプジョーの上を行く。欧州の電動化のリーダーシップを不動なものにしていく」と話した。 

 それぞれ「フランスでは」という限定付きだが、EVについては欧州全体で販売を伸ばしている。ルノーのEV「ゾエ」は20年に約10万台を販売し、テスラの「モデル3」、フォルクスワーゲン(VW)の「ID.3」を抑え、欧州でベストセラーのEVとなった。

 累計でもゾエは欧州EVの最量販車種である。12年に発売し、累計で約30万台を販売してきた。筆者が20年に英国で各社のEVを乗り比べる機会を得て10車種以上に試乗した際に、加速やブレーキなどで粗削りのEVが多い中、ゾエの完成度は高いように感じた。

 ただ、他メーカーが次々とEVを発売し、競争が激しくなっている。VWが20年夏にID.3を発売したことで、ルノーは欧州EV販売で首位の座をVWに譲った。車種別でも21年に入ってからテスラのモデル3が販売台数を伸ばし、1~4月ではルノーのゾエは、モデル3とID.3に続く3番手になった。韓国の現代自動車や仏プジョーのEVも販売台数を伸ばし、ゾエに迫っている。

 EVの競争が激しくなることで価格下落の圧力が働き、販売増加が見込める一方で、メーカーにとっては利益の確保が難しくなっている。

続きを読む 2/3 主力EVのパワートレイン開発でフォロワー

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