これだけのウクライナ人が亡くなる必要はなかった

トッドさんはウクライナ戦争の打開策として、フランスやドイツが「戦争から抜ける」ことを挙げていました。これは具体的にどのような意味なのでしょうか。

トッド氏:フランスもドイツも大した武器は持ってないので、その提供をやめることは大きな観点になりません。私は基本的にドイツが最終的に決めることになるはずだと思っています。例えば米国のイラクへの侵攻のときに、ドイツとフランスは侵攻に反対しました。それもドイツが決めフランスが付いていくという流れでした。

 今のドイツは非常に迷っていて、間違えた道を歩み始めているようにも見受けられます。ただしドイツがいったん合理的な、現実的な観点に戻ってくれば、どうやって抜け出すか、その手段も見いだすだろうと思います。ドイツが決めたら、最終的には今、感情に突き動かされている欧州諸国もドイツに付いていくのではないかと。そこでドイツの首相が特に大きな政策を打ち出す必要もないと思います。ただ単に、「もうやめよう」とさえ言えば、米国中心のこの戦争のメカニズムが崩壊し、そこからは良い判断が次々となされるでしょう。ドイツは気がつくだけでいいのです。

ロシアのウクライナ侵攻で、600万人以上のウクライナ人が国外に避難している
ロシアのウクライナ侵攻で、600万人以上のウクライナ人が国外に避難している

 この戦争の真に悲劇的な側面というのは、それが不条理なもの、非常にばかげたものだという点です。そして、この戦争は簡単に避けることができたのです。ロシアはウクライナのNATO加盟を許容できないと言い続けてきました。そしてドンバス地方の自立やロシア語話者の権利などを要求していました。ウクライナ人たちがそれを認めていればこのような戦争は起きなかったはずです。

 この戦争の理由は非常に不条理ですが、同時にいったん始まると抜け出すのが非常に難しくなっています。ウクライナも米国政府もニヒリストになっていて、ポーランドもそうですし、バルト3国や英国もおそらくそうなっているからです。

 ただ、欧州連合(EU)の国々がある日突然、目を覚ますこともあると私は思っています。今の戦争は非常に現実的で、実際に建物が崩壊され人が死んでいますが、始まった理由が非常に不合理です。悪夢という状態なので、誰かが目を覚まさなければいけないと私は思うんです。とんでもなくばかげた話だと人々は気付くべきだと思います。

 ロシアの人口を見れば欧州を攻撃しようだなんて、そんな計画をロシアが描いていたはずがありません。だからこれだけのウクライナ人が亡くなる必要はなかったのです。そして欧州全体がロシアへの経済制裁のせいで貧困化していくというような事態は避けられるはずだったのです。だからこの状態は本当にひどいことだと思うのです。

ロシアは米国の生徒だ

日本ではロシアのウクライナ侵攻に対して大きな懸念があります。ロシアの勝利を認めてしまうと、力によって領土を拡大することが世界的に認められかねません。そうすると例えば中国が力によって領土を拡大する恐れがあります。こうした考え方をどのように受け止めていますか。

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

■開催日:2023年2月22日(水)19:00~20:00(予定)
■テーマ:ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済「窮乏化」を阻止せよ
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■モデレーター:森 永輔(日経ビジネスシニアエディター)
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