全3813文字

他国が入国解禁の局面で英国は入国制限

 英政府のチグハグな新型コロナ対策はこれだけではない。22日には英国への入国者に対し、14日間の自主隔離を求めることを発表した。6月8日から英国に入国する際には、オンラインなどで政府に情報を提出し、自宅や宿泊施設などで自主隔離をしなければならない。違反者には1000ポンド(約13万3000円)の罰金を科す。アイルランドからの入国者や医療従事者、トラック運転者は、例外措置が適用される。

 この新ルールに対しても多くの疑問が寄せられている。パテル内相は「国内での感染速度を抑え、壊滅的な第2波を防ぐために導入する」と述べたものの、なぜ今なのかが明らかではない。他国は早くから自主隔離を導入し、国外からの感染者流入を警戒してきた。国内の感染者が減少してきたことから、スペインなど入国者の自主隔離措置の取りやめを発表する国も出てきた。

 だが、英国はこれまでは入国者に自主隔離を求めなかったにもかかわらず、流行が収まりつつあるタイミングで同措置を導入する。英政府は感染状況に応じて、3週間ごとに新ルールの緩和を判断する予定だが、経済活動のネックになりそうだ。

 14日間の厳しい自主隔離が求められれば仕事で英国に入国する意味が薄れ、海外からの出張はほとんどなくなるだろう。また、国民も海外に渡航し、その帰国後に自主隔離で生活に支障が出るため、海外に渡航する人も減るだろう。

 必要な措置であれば、なぜこれまで導入しなかったのだろうか。欧州連合(EU)は3月中旬から域外からの入国を原則禁止していた一方、英国はそれほど厳しい措置を取っていなかった。

 新ルールは、需要急減で窮地に立つ航空業界をさらに追い込むことになりそうだ。格安航空大手ライアンエアー・ホールディングスのマイケル・オレアリー最高経営責任者(CEO)は「この時期に隔離措置を導入する意味は全くない。経済を再開させることが目的なら、最悪の措置だ」と怒りを隠さない。製造業の業界団体メイクUKのステファン・フィプソンCEOは「サービスとメンテナンスのために国境を超えることができず、失望している」と述べた。

 しかも当初、英政府はフランス政府との間でフランスからの入国者に例外規定を適用する方針だった。だが、フランスだけを例外とする理屈が成り立たず、フランスからの入国者も規制対象とするように変更するなど、場当たり的な対応となっている。

 英政府は科学的な知見に基づく政策決定を売りにしてきたが、入国者に対する自主隔離措置の必要性について明確な科学的根拠は示されていない。