ワクチン調達を役所ではなく民間の専門家に委託

 前回、筆者のワクチン接種の体験談で紹介したように英国で接種が進んでいる。19日の英政府の発表によると、成人の約7割が1回目の接種を終え、約4割が2回目の接種を終えた。

 ワクチン接種の有効性は実証されている。英保健省やオックスフォード大学が被験者およそ37万人を対象とした調査では、米ファイザーや英アストラゼネカのワクチンを接種した後に感染者数は65%減少したという。イングランド公衆衛生庁は、1回の接種で家庭内感染を最大半減できるという調査結果を発表した。ハンコック英保健相は、「ワクチン接種が感染拡大や症状の悪化を防ぐ強い証拠がある」と語る。

筆者が英アストラゼネカのワクチンを接種した会場。非常にシステマチックに運営され、多くの人が接種に訪れていた
筆者が英アストラゼネカのワクチンを接種した会場。非常にシステマチックに運営され、多くの人が接種に訪れていた

 ワクチン接種がスピーディーに進んだ要因はいくつかある。1つは、政府のワクチン確保の戦略だ。20年4月にビジネス・エネルギー・産業戦略省の下に「ワクチン・タスクフォース」を設立。設立を指揮したジョンソン首相は、公衆衛生庁を飛び越え、民間出身者にタスクフォースを任せることにした。議長に選んだのは、ケイト・ビンガム氏。オックスフォード大の生化学の学位を持ち、米ハーバード・ビジネス・スクールでMBA(経営学修士)を取得し、製薬業界と金融業界に精通するベンチャーキャピタリストだ。ビンガム氏は、肩書にとらわれず多種多様なメンバーを招集する。

 ワクチンの開発が完了してからでは調達は間に合わないため、ビンガム氏は有力なワクチンを見定めながら、開発と生産に投資し、どの国よりも早く着実にワクチンを調達できる体制を整えた。実際、米ファイザーと世界で初めて新型コロナワクチンの調達契約を結んだのは英国だった。ビンガム氏は高額な広報コンサルタントを雇った疑惑などで20年末に議長を退任したが、その功績は大きい。

 2つ目は接種態勢だ。接種場所として、病院や新規のワクチンセンター、かかりつけ医に加え、薬局が指定されている点だ。英国では規制緩和で薬局での薬剤師によるワクチン接種が解禁されており、インフルエンザのワクチン接種なども商店街のドラッグストアで簡単に受けることができる。また、ワクチンの打ち手を広く募り、医学生などが担っているのも大きな特徴だ。筆者の接種担当は医学生だった。

 3つ目は接種の方法でリスクを取ったこと。ワクチン(1)英国、医療崩壊の懸念でリスク覚悟のスピード接種へで書いたが、英国はできるだけ多くの人が1回目の接種ができるように、1回目と2回目の接種間隔を延ばした。ワクチンメーカーが賛同していない中で、英国は独自の判断を下した。先ほど紹介した1回の接種でも感染者が65%減少したという大規模調査のデータがあり、英政府は自信を深めている。

地域ごとのきめ細かなデマ対策も

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