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介護施設の新型コロナ対策が遅れた英国

 なぜ、ここまで介護施設で亡くなる人が多いのか。もともと健康状態が良くない高齢者が多いという理由があるが、英国では様々な問題が浮上している。イングランドの中小介護施設の代表組織であるケア・イングランドのルイーザ・コリルハムリン氏は、「医療物資と検査、資金の問題に尽きる」と明解に指摘する。

 1つ目の問題として、病院でもマスクやフェイスシールド、ガウンなどの医療物資が不足する中で、介護施設に医療物資が行き渡るのが大幅に遅れた。コリルハムリン氏は、「多くの施設で医療物資が足りない状態が続いている」と指摘する。

 英国には病院を退院した高齢者が介護施設が見つかるまで短期滞在する施設がある。その施設で働くチャールズ・オックスリー氏は、医療物資の不足に悩まされてきたという。「感染が拡大した際には入居者の4人が感染していたが、医療防護具を着けずに対応していた。当時は感染の検査も受けられないので、頻繁に体温を測るしかなかった」と話す。その後、マスクなど医療防護具が供給されるようになったが、検査は受けられていないという。

 2つ目は、新型コロナの検査問題だ。英国は検査態勢を整えるのが遅れ、介護施設の入居者や職員が検査を受けられず、その間に感染を広げてしまったとの指摘がある。英国のイングランドでは約1万5500カ所ある介護施設の3分の1で感染者が出ており、広範な施設で感染が広がった。

4月中旬までに英国のイングランドでは、およそ3分の1の介護施設で新型コロナ感染者を確認した

 3つ目の問題が、介護施設の慢性的な経営難だ。NPO法人ナショナル・ケア・フォーラム(NCF)代表のビック・ライナー氏は、「大半の介護施設が経営難にある。我々のようなケアワーカーに拍手してくれるのはありがたい。政治家の温かい言葉も重要だ。しかし、それ以上に医療物資や資金を提供してほしい」と訴える。

 英国では初期段階で介護施設への支援を怠ったことが大きな問題になっている。政治家からは、科学者が介護施設のリスクを指摘しなかったと責任を押し付ける動きもある。英政府は地方自治体を通じて補助金を増額しているが、中小の介護施設にはなかなか届かないという。ケア・イングランドは「緊急事態なので介護施設に直接、補助金を提供してほしい」と求めている。