まだ商用生産していないにもかかわらず、欧州の自動車メーカーや産業界の期待を集める電池メーカーがある。スウェーデンのノースボルトだ。米テスラの調達担当幹部だったピーター・カールソン氏らが2016年に設立。スウェーデンで巨大電池工場を建設中で、21年10月以降に電池の供給を始める予定だ。

 同社は欧州で巨大電池工場の建設計画をいち早く立ち上げ、欧州連合(EU)が重視する二酸化炭素(CO2)排出量の削減やリサイクルを事業計画の中核に据えた。17年に欧州委員会が結成した「欧州バッテリーアライアンス」の中心的な企業と位置付けられ、欧州投資銀行と2度の融資契約を締結。EUの全面支援があることが安心材料となり、米ゴールドマン・サックスや独フォルクスワーゲン(VW)、独BMWからの出資を受け、資金調達額はおよそ35億ユーロ(約4650億円)に達する見込みだ。

 3月には、VWが30年までに欧州で6つの巨大電池工場を立ち上げることを発表した(参照:VW、巨大電池工場6カ所に 欧州勢突き動かすテスラと環境規制)。その際に、ノースボルトへの追加出資と合弁工場の規模拡大に加え、10年間でおよそ140億ドル(約1兆5000億円)分の電池を注文する方針を示した。電気自動車(EV)で覇権を握ろうとするVWの中でもノースボルトの重要性は高まっている。ノースボルトのカールソンCEO(最高経営責任者)に話を聞いた。

ピーター・カールソン氏。2011年~15年まで米テスラの調達担当幹部。16年にノースボルトを創業し、CEOに就任。

ノースボルトはまだ電池の供給実績がありません。電池の供給はいつから、どのくらいの規模で行いますか。

ピーター・カールソン氏(以下、カールソン氏):現在の施設には大きな投資を続けていて、スウェーデン北部のシェレフテオで工場を建設中です。9月までに設備を準備し、10~12月にはシェレフテオで生産した最初の製品を少しずつ供給し始めます。そして22年に供給量を増やす予定です。23年から25年にかけて、16ギガワット時から40ギガワット時まで生産能力を増やします。また、ノースボルトは今年、ドイツでも素晴らしいチームを築き上げていて、そこでも工場を建設しているところです。

工場を建設中ということですが、どのように進んでいますか。

カールソン氏:大きなプロジェクトですが、予定通りに進行しています。日本、韓国、中国、ドイツ、イタリア、その他の国から多くの設備や専門知識がもたらされています。21年は新型コロナウイルスの感染拡大による移動制限が最大のリスクとなるでしょう。

新型コロナの感染拡大は工場建設に影響していますか。

カールソン氏:シェレフテオには感染で隔離が必要な人たちが出てしまいましたが、建設はうまくいっています。私たちはスタートアップなので、不安定な状況でもより柔軟な対応ができるというメリットがあります。スウェーデンで新型コロナの感染が拡大しましたが、予定通りのスケジュールで生産を始める予定です。

ノースボルトはスウェーデン北部のシェレフテオで巨大電池工場を建設している

他メーカーの電池に比べ、電池のパフォーマンスとコストの面で違うところはどこですか。

カールソン氏:私たちが研究室で開発、設計した製品はとても良いパフォーマンスを見せていて、顧客の満足度も大変高くなっています。DCIRと呼ばれる直流内部抵抗が大変少なく、放電容量やサイクル寿命も優秀です。これらの側面で、開発チームは素晴らしい仕事をしてきました。現在取り組んでいるのは、コストと生産性の観点から、こうした設計をどのように拡大し、生産パフォーマンスを向上させていくかということです。

多くのアジア系メーカーが電池生産で先行しています。これらの企業にどのように対抗していきますか。

カールソン氏:私たちは、他社と競合できるような品質の電池を作っていることに加えて、最もサステナブルな方法をとっています。生産工程全体で再利用可能なものを用い、原材料も持続可能な方法で調達されたものだけを使います。またリサイクルシステムも開発し、当社が供給するバッテリーはすべて再利用できるようにします。

 これがノースボルトの提案です。この考え方はさらに重要性が高まっていると思います。ますます多くの人が、自動車の生産に伴うCO2排出量に目を向けるようになり、最も注目されているのは電池、その次が鉄鋼です。CO2を排出しない方法で電池を生産し、鉄鋼を石炭と天然ガスを使わずに生産できるようになれば、自動車生産に大きな変化を起こせるでしょう。私たちは最も重要な要素である電池に注力しています。

続きを読む 2/4 電池リサイクルは原材料購入よりコストが安くなり得る

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