内燃エンジン車プラットホームの黄金時代はこれから

 事業をEVに転換していくにあたり、プラットホームは大きな資産となります。今はEV専用プラットホームの「MEB」を増産しており、既に世界規模で生産しています。

 また、内燃エンジン車プラットホームの「MQB」もあります。2012年にこのプラットホームを導入した際は、割とコストの高いものでした。ですが、今では明らかに高いアドバンテージを持ち、いまだに高い商品価値を持つプラットホームです。また、非常に柔軟性もあります。

 現在は、既存の工場を次々とEV用に転換しつつ、MQBプラットホームを利用した内燃エンジン車のモデルを強化しているところです。この工程の中で、そうした内燃エンジン車のみを製造する工場も残していきます。

 MQBプラットホームには、さまざまなブランドのモデルを同じラインで製造できる柔軟性があります。そのため、全体の内燃エンジン車の製造量を減らしたとしても、(複数のモデルを集約し)1つの工場当たりの内燃エンジン車の生産台数は高いレベルで保てます。MQBは内燃エンジン車用プラットホームですが、その黄金時代はこれからです。

既存の工場がある点は、米テスラと大きく異なる点ですね。

アントリッツ氏:はい、テスラには事業転換というストーリーはありません。ただもちろん、テスラは競合相手です。我々は事業転換という点で、業界を率いる企業になることを目標としています。VWはEVプラットホームと内燃エンジンプラットホームにより、事業転換において業界をけん引する存在となれる大変良い立ち位置にいると思います。

ドイツのツウィッカウ工場ではかつて内燃エンジン車を生産していたが、今はEV工場に生まれ変わった
ドイツのツウィッカウ工場ではかつて内燃エンジン車を生産していたが、今はEV工場に生まれ変わった

2019年と比べると、2021年の販売台数は大幅に減少しました。今後、販売台数はどうなりそうですか。

アントリッツ氏:ウクライナでの戦争で販売台数は減少しました。特にワイヤハーネスの不足が原因です。また、長引いている業界全体の半導体不足も一因です。減少した数を補う台数を生産したいと思っています。さらに、事業の進め方について戦略を変更しています。VWは規模より質と利益率に集中し、設備稼働率を高めていくという明確な方向性を持っています。

EVは販売奨励金をほとんど付けず、強気の価格設定に

2024年までにEVと内燃エンジン車の利益率を同等にすることを目標にしていました。ウクライナでの戦争により電池の原材料コストが上昇しEVのコストが上がりそうですが、その利益率の目標は変えませんか。

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