世界的に進む電気自動車(EV)シフトでは、さまざまな課題が指摘されている。特に自動車メーカーの観点から問題視されているのが、コストの高いEVは利益率を低下させ、経営を圧迫するという点だ。ロシアのウクライナ侵攻で電池材料の価格が上昇していることも懸念されている。

 世界の自動車大手の中でも特にEVシフトに積極的なドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、いつ頃までにEVと内燃エンジン車のコストを同じにできるのか。また、どのような戦略で実現するのか。アルノ・アントリッツ最高財務責任者(CFO)に話を聞いた。

フォクスワーゲンは3月に電動ミニバン「ID.Buzz」を発表した。ロングセラーのワーゲンバスを彷彿(ほうふつ)とさせる
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VWグループが強力なEVシフトという事業構造改革を進めていく上で、どのような財務的な手当てをしていますか。当面コストの高いEVは、利益が出にくい状況です。固定費を下げるために、どのような取り組みをしていますか。

アルノ・アントリッツCFO(以下、アントリッツ氏):固定費削減が改革の資金源となり、VWの未来を確かなものにするということには、社内の誰もが気づいています。そうした意識のもと、全員がこの計画に参加し協力しています。

 グループ全体での間接費は、およそ400億ユーロ(約5兆3800億円)と多額に上ります。私たちの目標は、この400億ユーロを2019年と比べ10%削減することでした。2021年末には既にこの目標を達成し、年間40億ユーロを節約しました。マーケティング費用や工場関連の費用を削減し、想定よりも利益の見通しが低いと分かったプロジェクト、特にICE(内燃エンジン)車に関するものを停止しました。また、内燃エンジン車の利益率を安定させるためにモデルの数も減らしました。

 今後の目標は、エネルギーコストが高騰する中、新規事業に投資していても、これまでに達成してきたものを維持することです。

VWグループ最高財務責任者(CFO)のアルノ・アントリッツ氏。1970年ドイツ生まれ。コンサルティング会社を経て、2004年、VWグループ入社。10年からVWブランド取締役。20年にアウディCFO、21年から現職
VWグループ最高財務責任者(CFO)のアルノ・アントリッツ氏。1970年ドイツ生まれ。コンサルティング会社を経て、2004年、VWグループ入社。10年からVWブランド取締役。20年にアウディCFO、21年から現職

今後は内燃エンジン車のモデルをどれくらい削減しますか。

アントリッツ氏:私たちは野心的なEV販売増の計画を掲げており、2030年までに販売台数全体の50%、またはそれ以上のEVを販売する予定です。つまり、内燃エンジン車の販売台数は総数の50%まで削減されます。

 内燃エンジン車の利益率を落とさずに維持するという目標を達成するため、また複雑性も減らすために、そのモデル数を60%減らそうとしています。同時に、EVモデルの数も増やしているところです。今は提供する製品を転換している最中で、多くのセグメントで新たなEVモデルを大幅に増やしていきます。

設備投資額はどのように削減しますか。 ほとんどのEV工場は従来の工場を再利用することになるのでしょうか。

アントリッツ氏:その通りです。我々は全体の生産能力を増やそうとは考えておらず、従来の工場をEV工場に続々と変えていっています。EV製造のために再利用した初めての工場は、ドイツのツウィッカウ工場でした。その次がドイツのエムデン工場です。

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