欧州に遅い春が到来しつつある。最も遅くまで都市封鎖(ロックダウン)が続いていた英国で、5月11日から段階的解除が始まった。フランスも同日から百貨店やブティックなどの営業が許可された。完全に解除された国はほとんどないが、欧州のほぼすべての国で解除の道筋が見えたことになる。
だが、その歩みは心もとない。ワクチンが開発されておらず、解除で人同士の接触が増えれば感染が再び拡大する恐れがある。そうなれば、最悪の場合さらなるロックダウンも想定されており、これまでの我慢や経済の停滞が無駄になってしまう。
欧州の人々は感染がいち早く収束し、自由に外出できる日を心待ちにしている。ロックダウン期間中の欧州各地の写真と共に、封鎖下に暮らした人々の思いをお届けする。


4月中旬、英ロンドンの中心部。1カ月ぶりに会ったジミーさんは、事務用の椅子に腰掛け静かに新聞を読んでいた。「久しぶり」と声をかけると、新聞から顔をあげて老眼鏡をずらし、鼻の上にシワを寄せてほほ笑んだ。
お互いの健康と無事を確認しあった後に、ジミーさんはしんみりと語った。「ほら、新聞にも書いてあるけど、今日も多くの老人が死んだ。ベリーベリーサッドだ。本当にひどいウイルスだ」
4月中旬、英国では感染者と死者の増加が止まらない状態に陥っていた。マンションの管理人を生業とするジミーさんはバスを乗り継ぎ、職場に向かっている。いつもは人が絶えることのないロンドンの街は静かだ。
ロンドンの公共バスの運転手も犠牲者となり、予防のためバスの運転席の周りは立ち入り禁止となった。新型コロナは医療従事者だけでなく、地下鉄の運転手など生活インフラを担う「キーワーカー」と呼ばれる人々の命も多く奪った。ロックダウンが段階的に解除されたが、ジミーさんはウイルスと長い戦いになることを覚悟している。
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