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新型コロナウイルスの感染拡大は人々の生活を一変させた。収束後もすべてが元に戻るわけではなく、人、企業、国などが営みを続けるうえでの新たな「常識」となって定着しそうなものも多い。各地で芽吹いている「ニューノーマル」を追う。今回のテーマは「強みを発揮する小国や自治体」。

 5月6日、ドイツのメルケル首相は真っ赤なジャケットに身を包み、記者会見で新型コロナウイルス対策の進展を発表した。世界中のメディアにドイツの大幅な規制緩和のニュースとメルケル首相の姿が配信された。

 だが、実際の会見でメルケル首相の隣に座り、首相を上回るほど発言し、存在感を発揮していた男性の発言や姿は、海外メディアでほとんど報じられていない。この男性はバイエルン州首相のマルクス・ゼーダー氏であり、会見でここまで存在感を発揮している点に、ドイツの新型コロナ対策の特徴が現れている。

5月6日の記者会見に臨むメルケル独首相(写真右)とバイエルン州首相のマルクス・ゼーダー氏(同左)。ゼーダー氏はドイツの最大与党、キリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)の党首でもある (写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 メルケル首相はこの会見で、新規の感染者が減少していることから、規制を大幅に緩和する措置を発表した。政府と16州が合意し、州の判断によって順次、飲食店などすべての店舗を再開していく。サッカーのブンデスリーガは16日から無観客で再開する。メルケル首相は、「我々は、このパンデミックにおける最初の段階を通り過ぎたと、問題なく宣言できると思う」と語った。

連邦制が奏功したドイツ

 ドイツは欧州主要国の中では、新型コロナによる死者数が圧倒的に少なく、経済再開も早い。再開後に感染再拡大の兆しがあるが、それでも感染者数や死者数は欧州主要国の中では少ない。メルケル首相のリーダーシップや危機管理体制、感染症専門機関のロベルト・コッホ研究所によるイニシアチブ、迅速な検査体制の確立など様々な成功要因が語られている。

 だが、あまり報じられていない成功要因として、連邦制が奏功した点は見逃せない。会見でバイエルン州首相が積極的に発言しているのはその象徴である。

 ドイツは他の欧州主要国と異なり、連邦制を採っており、州政府が警察や教育など内政面で幅広い権限を持つ。州政府の首相は内閣を組織する行政のトップで、ドイツ政界での影響力も大きい。

 新型コロナ危機においては、その州政府が連邦政府に先んじて行動を起こし、連邦政府がそれを追認し、国全体として調整するというケースが多かった。メルケル首相は4月15日の記者会見で、「特にシャットダウン段階では、一般市民の連帯を強め、規制効果を出すためのバイエルン 州、バーデン・ヴュルテンベルク州(BW)の厳しい動きが、他の連邦州のペースメーカーになった」とたたえた。

 では、具体的に各州がどのような対策をとってきたのだろうか。