
英国が新型コロナウイルスのワクチン接種で先頭集団を走っている。英オックスフォード大学のアワー・ワールド・イン・データによると、5月4日時点で全人口のうちワクチンを少なくとも1回接種した人の割合が最も高いのはイスラエル(62.6%)で、2位が英国(51.3%)だ。人口5000万人以上の国に限ると、英国と米国(44.2%)の接種率が突出して高い。
もう1つ、英国の特徴として、自国のオックスフォード大学とアストラゼネカが開発したワクチンを多くの人が接種している点がある。同ワクチンは「ウイルスベクター」と呼ばれるタイプで、新型コロナウイルスのタンパク質をつくる遺伝子を無害な別のウイルスに組み込んだもの。日本で接種されている米ファイザー製とは異なるタイプのワクチンだ。
ただ、接種後に血の塊である「血栓」の症状が現れるケースが報告され、欧州では一時接種を見合わせる国もあった。接種再開後も対象を60歳以上に限定する国もある。しかし、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は効果がリスクを上回るという見解を示し、英国では既に2850万回分のアストラゼネカ製ワクチンが接種されている。
日本政府はアストラゼネカと6000万人分の調達契約を結んでおり、承認され次第、接種が始まる予定だ。日本ではまだ接種されていない英アストラゼネカ製ワクチンを理解していただくために、筆者が体験した接種の様子や副作用について紹介したい。
12月8日からワクチン接種が始まった英国。医療従事者や重大な疾患を抱える人々の他は、基本的に年齢が高い人から順番に接種が進んできた。4月下旬、筆者にも順番が回ってきた。
26日、月曜日の早朝に英BBCが、今週から44歳を対象に接種が始まるというニュースを流していた。44歳の筆者は、「予約は早い者勝ちになる」と考え、慌てて専用のウェブサイトを開き、予約手続きに入る。接種日時の選択画面に進むと、翌日以降ならいつでも選べる状況に。落ち着いて28日午後に設定し、アプリで予約を完了させた。

自宅から出かけて接種、帰宅まで30分以内
28日の接種会場は自宅から徒歩5分の施設だった。受付の看板に、「アストラゼネカ」とワクチンの種類が記載されている。接種中断など何かと物議を醸しているワクチンなので少し残念に感じたが、「接種を受けられるだけでありがたい」と気を取り直して建物の奥に入っていった。担当者に番号を伝えると個人情報と健康状態のチェックを手際良くこなしていく。日本に住んだことがあるスタッフがおり、近場の日本食レストランについて情報交換をするなどリラックスした雰囲気だった。
入場後ほぼ待つことがなく、簡易カーテンとパーテーションで仕切られた接種スペースに。接種の担当者は、副作用などについて早口で説明してくる。髪が肩までかかりそうな男性で防護具の下から、やや汚れたジーンズとスニーカーがのぞいている。話を聞くと、どうやら医学生のようだ。
用意が整ったところで長身の医学生が注射針をケースから取り出すと素早く身をかがめ、筆者の左側にひざまずく。そのまま左腕にブスッと刺して一瞬で接種は終わった。
ファイザー製ワクチンでは急激なアレルギー症状が出る可能性があり、接種後に待機時間が設けられているが、アストラゼネカ製はそれがあまり心配されていないようだ。問題がなければすぐに会場を出るように促され、すぐに服を着て外に出た。接種の会場に入ってから出るまで15分ほどで、待ち時間はほとんどなかった。自宅を出て接種を受け、帰宅するまでのドア・ツー・ドアで30分もかからなかった。
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