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新型コロナウイルスの感染拡大は人々の生活を一変させた。収束後もすべてが元に戻るわけではなく、人、企業、国などが営みを続けるうえでの新たな「常識」となって定着しそうなものも多い。各地で芽吹いている「ニューノーマル」を追う。今回のテーマは「中国と距離を取る欧州各国」。

 中国とどのように付き合うべきか――。

 これは欧州各国の首脳にとって頭の痛い問題だ。独裁政権であるため情報公開や人権などの観点で欧州の価値観と相いれない部分が多いが、経済的には非常に重要なパートナーである。ローディアム・グループの調査によると中国から欧州連合(EU)への投資は2010年代に急増し、19年までに総額でおよそ1600億ユーロ(18兆4000億円)に達する。

 欧州経済は外需でもインフラ投資でも中国への依存度が高いため、これまでは多分に遠慮があったが、新型コロナの感染拡大を受け、風向きが変わりつつある。

2019年3月にフランスで会談した仏マクロン大統領と独メルケル首相、中国の習近平国家主席(写真:Abaca/アフロ)

 4月、フランスのマクロン大統領は厳しい言葉で中国を批判した。英フィナンシャル・タイムズのインタビューで「中国がこれ(新型ウイルスの流行)にうまく対処していると、バカ正直に言ってはいけない」と語った。

 フランス経済において、中国の存在感は日増しに高まっている。2019年3月に中国の習近平国家主席がフランスを訪れ、マクロン大統領と会談した際には、400億ユーロ(約4兆6000億円)に及ぶ巨額の受注契約を結んだ。欧州エアバスが小型機を290機、中型機を10機、中国の航空会社から受注。会談後の会見では慎重に言葉を選び、話していた。

 だが、新型コロナで国家が「戦争状態」(マクロン大統領)になり、多くの死亡者を出したため、発生源である中国に対してより厳しい姿勢を鮮明にしている。

損害賠償額は約430兆円と試算

 フランス以上に中国への依存度が高いのがドイツだ。

 ドイツ経済を支える自動車産業はその象徴で、独フォルクスワーゲンの全世界での販売台数のうち約4割を中国が占める。メルケル首相もこれまで非常に慎重な発言に終始してきたが、さすがに今回は苦言を呈さざるを得なかった。

 メルケル首相は20日、記者会見で「中国が新型ウイルスの発生源に関する情報をもっと開示していたなら、世界中のすべての人々がそこから学ぶ上でより良い結果になっていたと思う」と述べた。

 英国のシンクタンク、ヘンリー・ジャクソン協会は4月上旬、中国政府が新型コロナの初期対応に失敗したことで武漢以外に感染が拡大し、世界に大きな被害をもたらしたと指摘。主要7カ国(G7)だけで損害賠償額は3兆2000億ポンド(約430兆円)に達するという試算を公表した。