世界でもいち早く都市封鎖(ロックダウン)が始まった欧州では、テナントである小売店や飲食店などの家賃が大きな問題になっている。営業禁止で売り上げが立たず、家賃の支払いが困難なため閉店するテナントもある。しかも、封鎖解除が見えてきたとはいえ、顧客の戻りは予想できず、今後も家賃支払いが事業継続上の障害になりそうだ。
一方で、家主にも事情がある。多くの物件を抱える大手不動産会社や機関投資家はまだ余裕があるかもしれないが、中小の家主にはローンを抱えていたり、家賃収入を生活費に回したりしているところもある。
そうした中、各国政府はテナントの支援に動き出し、様々な制度を設けた。ただ補償の範囲は限られるため、テナントと家主の間で激しい家賃交渉が行われている。パンデミックの震源地であるイタリア・ミラノを拠点に、欧州各地で商業不動産などの店舗開発を手がけるイタリア・フドウサン・リアル・エステートの河見一成社長に、家賃交渉の実態と今後の展望を聞いた。

兵庫県出身、一橋大学商学部経営学科卒業。大学卒業後、2006年までメリルリンチ証券にて勤務し、主に金融派生商品・証券化商品のマーケティング等を担当。同年にイタリアのミラノにわたり、イタリア・フドウサン・リアル・エステートを設立。イタリアでも数本の指に入るハイストリートの店舗開発事業に特化した不動産会社に育て上げる
まず今のイタリア・ミラノの状況はいかがでしょうか。
河見一成社長(以下、河見氏):3月は新型コロナによる感染者数と死者数の伸び方が尋常ではなかったので恐怖感がありました。あの友好的なイタリア人が通りで対面すると距離を取ろうとするぐらいですから。今はロックダウンの生活に慣れ、食事もデリバリーサービスを使うことがよくあります。
私は14年前にイタリアに渡り、不動産の仲介業を営んでいますが、当然のことながら経営でも初めての事態に直面しました。10名ほどのイタリア人社員と共に在宅勤務に移行し、最初はうまくいかないこともありましたが、今ではだいぶ仕事がはかどるようになりました。
イタリアなど欧州ではロックダウン期間の延長が続き、アパレルや飲食店の家賃支払いが大きな問題になっています。
河見氏: イタリアでは業種によっては3月8日から5月17日または5月末まで2カ月以上営業が禁止され、アパレルや飲食店は大きな痛手を受けています。営業禁止期間の家賃の支払いは遅れてもいいのか、ディスカウントは期待できるのか、中途解約はできるのか、など様々な議論が起きています。
3月末は多くの企業が4~6月分の家賃を支払うタイミングであり、 実際にテナントはいろいろな要望を家主に出しています。家主の同期間の家賃回収率は、30%以下ともいわれる異常事態です。
テナントから家主への交渉は、様々なパターンがありました。支払いを先延ばしする、通常は3カ月ごとの支払いを1カ月ごとに変更する、50%のみ支払い感染拡大の収束後に話し合いをする、などでした。4月上旬から、大手テナント各社は具体的な値引きなどの目標を定め、長期間の家賃交渉を始めています。
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