24日、フランスのマクロン大統領(写真壇上右)は決選投票で再選を決め、勝利宣言をした。壇上左は、妻のブリジットさん (写真:井田純代)
24日、フランスのマクロン大統領(写真壇上右)は決選投票で再選を決め、勝利宣言をした。壇上左は、妻のブリジットさん (写真:井田純代)

 4月24日、フランス大統領選の投開票が実施され、現職のマクロン大統領が再選された。2002年のシラク氏以来の大統領再選となる。欧州連合(EU)の統合を強化し、ロシアのウクライナ侵攻など国際問題についても積極外交を展開していくことになりそうだ。

 2人の候補者による決選投票はマクロン氏が約59%、極右国民連合のルペン氏が約41%を獲得した。一時は支持率でほぼ並んだが、結果は事前調査より差が開いた。ただ、前回の2017年の大統領選では両者の得票率が2倍の差がついていたことからすると、大きく追い上げられた。

 マクロン氏が勝利宣言の場に選んだのは、パリの象徴であるエッフェル塔近くの公園だった。支持者たちはフランス国旗と共に、EUの旗を掲げていた。マクロン氏は「極右に投票した人たちの懸念に対応するのが、私と私のチームの責任だ」と語りかけた。

 会場に駆けつけたルニ・ルメールさん(52歳)とマーク・ルメールさん(55歳)の夫妻は、ルニさんがマクロン氏のファンでフランスとEUの国旗を持って駆けつけた。マークさんは「ルペン氏が大統領になったら悲惨なことになっていた」と胸をなでおろしていた。

ルメールさん夫妻は、支持者とマクロン氏の勝利を喜び合うためにイベント会場に向かった (写真:井田純代)
ルメールさん夫妻は、支持者とマクロン氏の勝利を喜び合うためにイベント会場に向かった (写真:井田純代)

 「金持ち大統領」vs.「人種差別主義者」──。選挙戦は誹謗(ひぼう)中傷の応酬だった。富裕税の廃止など富裕層寄りの政策で大衆から反発を受けるマクロン氏と、移民の制限を打ち出すルペン氏。決選投票にもつれた両候補の勝負の分かれ目は、1回目の投票で第2位のルペン氏よりわずか1.2ポイント下回る第3位の得票率を獲得した極左のメランション氏の支持者の取り込みだった。

 メランション氏は移民に寛容な政策を掲げ、富裕層寄りのマクロン氏の政策に異を唱えていた。そのためメランション氏のコアな支持者は、決選投票で棄権する意向を示していた。ただ、その中でもマクロン氏もしくはルペン氏だけには勝たせたくないと考える有権者がいるため、両陣営はその取り込みに奔走した。

 マクロン氏は1回目の投票以降、環境問題や格差に敏感な左派有権者を意識し、植樹の強化や貧困地域での雇用や住居、治安対策の強化を訴えた。一方のルペン氏は支持層を広げるために、移民への攻撃的なトーンを弱め、ソフトなイメージを広げようとしていた。

 その中でも最大の争点は、生活者を苦しめるインフレへの対応だった。昨年後半から新型コロナウイルスの感染拡大が抑制され、経済活動が一気に再開したことで供給が追いつかず、欧州各国で物価が上昇した。さらにロシアのウクライナ侵攻で、経済制裁としてロシア産のエネルギー輸入を減らしたため、需給がひっ迫し、インフレが加速している。

 フランスの3月の総合インフレ率は前年同月比4.5%上昇となった。エネルギーは29.2%も上昇している。エネルギー価格の高騰は物流コストなどにも響き、生鮮食品は7.6%上昇。物価高が多くの人々の生活を苦しめている。

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