日本の新型コロナウイルス対策が、感染が拡大した欧州各国のそれに比べて特殊性が際立っている。経済活動の継続と感染拡大の抑制を両立できれば望ましいが、中途半端な対策によって共に頓挫するリスクをはらんでいる。

安倍晋三首相が緊急事態宣言を発令した後も、通勤や買い物で人出が多い場所はある(写真:つのだよしお/アフロ)
安倍晋三首相が緊急事態宣言を発令した後も、通勤や買い物で人出が多い場所はある(写真:つのだよしお/アフロ)

 安倍晋三首相は4月7日、緊急事態宣言を発令した。1つの特殊性は、欧州のように強制力を伴った外出禁止ではなく、法的拘束力を伴わない外出自粛を要請している点だ。欧州各国では警察に強制力を持たせ、違反者には罰金を科すことで国民に外出禁止を徹底させている(参照:新型コロナで「外出禁止」ならどうなる? 欧州の事例を徹底比較)。

 一方で、日本は国民の自主性に委ねる形での対策となり、その効果は未知数だ。11日、12日の週末も主要駅周辺や東京都心の繁華街の人出が減少したが、生活圏の商店街や住宅街などでは多くの人出があったという。

 もう1つの特殊性は、休業要請の対象だ。緊急事態宣言の発令を受け、7都道府県の知事は順次、休業要請を出している。東京都の小池百合子知事はすぐに休業要請を出す予定だったが、政府との調整が難航し、発表は10日にずれ込んだといわれている。東京都はパチンコ店やネットカフェの自粛を要請し、要請に応えた中小事業者には50万円の協力金を給付する。しかし、居酒屋など飲食店と理髪店は対象外とされ、飲食店は夜8時までの営業を認める方針を示した。

 確かに経済活動を止めないためには、できるだけ多くの店を営業させ続けた方がいいだろう。だが、密閉・密集・密接の「3密」を避けるという原則からすると、飲食店や理髪店は3密になり得る要素がそろっている。集団感染の発生源となっている接客を伴う飲食店については、安倍首相が全国一律の営業自粛を要請したが、通常の飲食店が発生源になってもおかしくない。

 日本経済新聞の報道によると、東京都の休業要請リストの素案には、居酒屋や理髪店を含んでいたが、政府との調整の中で削除されたという。今回の休業要請は東京都の要請内容が指標になっており、神奈川県や埼玉県も都に従い、飲食店と理髪店の営業は認めた。

 新型コロナ対策を担当する西村康稔経済財政・再生相は12日、休業要請の内容について、「私権の制約を伴うものであり、措置は『必要最小限に』という規定がある。都道府県知事が自由に、恣意的に取れるというものではない」と語り、政府の関与を強くにじませた。

続きを読む 2/3 休業しない飲食店も多い

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