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 英国のジョンソン首相は6日夜、新型コロナウイルスの症状が悪化し、集中治療室(ICU)に入った。首相官邸の報道官は7日、「(容体は)安定しており、良い精神状態を保っている」と述べた。

 ジョンソン首相が新型コロナの感染を公表したのが3月27日。それから自主隔離を続け、Twitterに自身の動画も投稿していたが、4月5日以降に事態が急変した。症状が改善しないことから検査入院ということだったが、わずか1日でICUに入り、英国に動揺が広がっている。

 「英政権中枢で新型コロナの集団感染、高齢者多い安倍政権は大丈夫?」で書いたように英政権は、難しい状況に陥っている。ジョンソン氏は緊急時に首長代理となる副首相を任命しておらず、当面はラーブ外相に首相代理を要請したが、政権内ではその決定経緯やラーブ氏の手腕を疑問視する声が上がっている。

 政権内の実力者であるゴーブ・ランカスター公領相は、「ロックダウンに関しての方針は、ラーブ外相だけの決定ではなく内閣全体で決める」と発言している。ジョンソン氏と同じ日にハンコック保健相が感染を公表したほか、ゴーブ氏も感染疑いで自主隔離するなど政権内で感染者や感染疑いの者が続出し、連携を取りにくいことも混乱を招く要因になっているようだ。

「集団免疫」戦略で検査体制に遅れ

 英国で、新型コロナの爆発的な感染拡大が起こっている。7日夜時点の感染者は5万5242人、死亡者は6159人。致死率は11.1%でイタリアに次ぎ世界で2番目の高さだ。致死率が非常に高い要因の1つに、検査数が少ない点が挙げられている。発覚する感染者数が実態より少ないために致死率が高くなっている可能性があるからだ。日本も検査数が少ないという問題点があり、英国の事情は他山の石とすべき部分が多い。

他国より遅れたものの、英国でもドライブスルー方式の新型コロナ検査が実施されるようになった(写真:ロイター/アフロ)

 英政府は当初、「症状が重い人のみ病院で検査」という方針を取っており、検査対象者を制限していた。3月11日の段階で、検査を受けていたのは1日当たりわずか約1200人だった。

 「強気の『休校せず』から暗転、英国が示すイタリアとの不吉な符合」で書いたように、英政府は3月中旬まで、人々の行動や経済活動を制限しない方針を取っていた。その象徴が、多くの人が感染することで免疫をつけ、その人たちによって感染の急拡大を防ぐという「集団免疫」の戦略だ。

 こうした緩い新型コロナ対策が、検査体制の構築の迷走にもつながったとの指摘は多い。当初は検査の対象を新型コロナの症状を発症し、深刻な状態にある患者のみとしていたため、検査を受けられない人が続出。検査を要請したものの受けられず、自主隔離をしているうちに完治したという証言も多い。