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総感染者数の14%が医療関係者

 スペインにおいてイタリア以上に深刻な状況にあるのが、医療機関と介護施設での感染拡大だ。スペイン厚生省は24日、総感染者数の14%を医療関係者が占めると公表した。イタリアでは、その割合は8%程度といわれ、10%を超える国は珍しい。スペインでは医療関係者が感染を媒介しているとの指摘もある。

 具体的な証言も多い。マドリードの医師労働組合によると、マドリードで最も大きい病院の1つであるラパス病院では、426人の職員が新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示し、自宅で隔離されているという。カタルーニャ地方のイグアラダ病院では総職員の3分の1に当たる約1000人が自宅隔離になっている。

 看護師の労働組合は「マスクや手袋といった医療装備が不足している」と窮状を訴えており、それが感染拡大につながっているとの指摘は多い。ロイター通信によると、マドリードの医師労働組合が地域の保健当局に病院に保護具を提供することを求める訴訟を起こしている。

 スペイン政府は医学生や退職した医師などに呼び掛け、5万人の人材調達計画を立てている状況だが、現場の人材不足を即座に解消するのは難しそうだ。

数十カ所の介護施設で新型コロナの感染拡大

 

 病院の受け入れ能力が限界に近づいているため、病院が介護施設からの患者の受け入れを拒否するケースもあるが、介護施設には人工呼吸器など医療機器が不足している。そのうえ、「医療機器やウイルス検査キットを求めて病院と争わなければならない」と、業界の代表者は語っている。

 介護施設の職員からは「感染した患者への対処法についての指導を、ほとんど、あるいは全く受けていない」との声が上がっている。こうした状況の中、スペイン全土にある約5500の介護施設のうち数十カ所で、新型コロナの感染が拡大していると見られている。米誌タイムによると、介護施設内の遺体の回収が追い付かず、数日間遺体を施設内に残しておかなければならない事態になっている。

 さらに想像を絶する現場もある。マルガリタ・ロブレス国防相が介護施設にスペイン軍の兵士らが消毒作業に入った際の様子を地元のテレビ局に語った。「兵士らが、治療を受けられずに放置されている高齢の感染者やベッドで死亡している人を発見した」。こうした事態を受け、検事総長は捜査を開始したと発表している。

 日本で高齢者介護施設や障害者福祉施設を運営する社会福祉法人幹部は、以下のように指摘する。「防護服やマスク、ゴーグルなど医療器具がない中での感染者の介護は本当に恐ろしいだろう。現場に命がけの仕事までは求められず、スペインのような状況で職場放棄をしても責めることができないかもしれない」