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 イタリアに次いでスペインでも新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が起きている。3月29日までの感染者数は7万8797人、死亡者数は6528人で致死率は8.3%に達している。同日1日当たりの死亡者数は838人と3日連続で過去最多を更新し、事態が収まる気配がない。

 スペインの1日当たりの死亡者数は、累計死亡者数が世界最多となっているイタリアを上回る日が増えており、同国よりも状況が悪化する懸念が広がっている。スペインはイタリアより人口が少ないため、同国より深刻な医療崩壊が起きているとの指摘がある。スペイン政府はこれまでも全土の封鎖や外出禁止令を出してきたが、30日から2週間、必要最低限の仕事以外の通勤を禁じる措置を取った。

 経済的なダメージは深刻で、2020年の国内総生産(GDP)はマイナス成長の見通し。サンチェス首相は「20年は12カ月ではなく、10カ月もしくは9カ月しかない」と語っている。

 スペインの宝ともいわれる聖堂「サグラダ・ファミリア」の工事にも影響が出ている。同聖堂の芸術工房監督を務める外尾悦郎氏は本誌の取材に対し、仕事や生活の様子を次のように語った。「この2週間、建設工事はストップし、全員が自宅待機している。私のプロジェクトチームはテレワークをしながらネット会議をしているが、先が見えず難しい」「食料や薬剤は問題なく手に入り、水道・電気・ガスなど生活基盤も安定している。医療関係者や治安関係者が、衛生・防備用品が不足する中、使命を全うしてくれている姿に感動すら覚えている」

スペインでは医療機関と介護施設で新型コロナの感染が拡大している(写真:AP/アフロ)
感染者の増加はイタリアで減速し、スペインは変わっていない
注:感染者数、死亡者数とも確認された数の累計
出所:European Centre for Disease Prevention and Controlを基に編集部で作成
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/download-todays-data-geographic-distribution-covid-19-cases-worldwide
イタリアとスペインは死亡者数が圧倒的に多く、世界でも1番と2番になっている
注:感染者数、死亡者数とも確認された数の累計
出所:European Centre for Disease Prevention and Controlを基に編集部で作成
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/download-todays-data-geographic-distribution-covid-19-cases-worldwide

 スペインで感染者や死亡者が激増している理由は、イタリアと共通する部分が多い(参照:新型コロナで致死率9.3%のイタリア、オーバーシュートの脅威)。スペインの平均寿命は83歳と、高齢者が多い。挨拶では頬にキスを交わすなど人との距離が近いため、首相夫人のほか、国会議員にも感染が広がっている。他の欧州の国にも共通するが、中国との往来が多く、初期の感染拡大に影響をもたらしたとの見方もある。

 脆弱な医療体制もイタリアと似ている。経済協力開発機構(OECD)によると、1000人当たりの病床数はスペインは3床で、3.2床のイタリアより少ない。医療関連予算が削減され、医療従事者や医療用品の不足が深刻化している。マドリード市内の病院の医師は米ブルームバーグ通信に対し、「病院の待合室で入院する前に亡くなる感染者もいる。治療を優先する重症者の選別をしなければならない」と医療崩壊の惨状を語っている。