感染から公表データ反映にタイムラグ
1つ目は、外出制限の3月10日より前に感染が広がっており、データには遅れて反映されている可能性だ。新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜14日で、症状が現れる平均日数は5~6日といわれている。症状を自覚してから検査を受け、公表されるまでに一定の時間がかかるだろう。長いケースでは、感染から公表データに反映されるまで2〜3週間かかる可能性があり、10日の外出制限より前に感染している人々の検査結果が、徐々に明らかになっているのかもしれない。
2つ目は、外出禁止を守っていない人々がいて、その人たちが感染を拡大している可能性である。10日以降、経済都市であるミラノの中心地などでは人が明らかに減っているが、場所によっては人々が集まっているケースもあるという。地元メディアは、ミラノのおしゃれなエリアとして知られるナヴィリオ地区に人々が集う様子などを報じている。
3つ目は、医師や看護師など医療従事者の感染だ。イタリアでは感染者のおよそ1割が医療従事者とのデータがある。ロンバルディア州では多くの医療従事者が感染してしまっているとの報告もある。先ほどのWSJの記事では、救命救急士が感染し、街中で感染を広げているという指摘があった。
こうした状況の中で、医療崩壊が起きてしまっているのが4つ目の理由だ。現地の医療従事者から医療崩壊の実態が報告されているが、データで見ても、今後も厳しいことが分かる。22日時点で新型コロナに感染し、ICUで治療を受けている患者は約3000人、入院患者数は約2万人と右肩上がりに増えており、逼迫している医療態勢を改善するのは容易ではない。
イタリアのコンテ首相は21日、「戦後、最も困難な危機だ」とビデオメッセージで訴え、一段の対策強化を打ち出した。経済活動への配慮のため、オフィスや工場の稼働を許容してきたが、暮らしに関わる食品や薬品の工場を除き、これらの稼働も停止させた。
ジョギングなど屋外運動を禁止するほか、すべての公園を閉鎖した。ミラノに暮らす日本人は、「外出していないので感染リスクは少ないと思うが、万が一体調を崩した場合に治療を受けられない可能性があるので、緊張しながら暮らしている」と話す。
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